【社説】非常事態で政治的有利・不利ばかり計算する韓国与野党
韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行の役割と職務範囲をめぐり与野党が消耗的政争の沼に向かっている。与党は「憲法裁判官を任命するべきでない」、野党は「拒否権を行使するべきでない」と主張している。国政と民生の安定のために額を突き合わせても足りない時に、法的な隙間で政略的な計算に没頭する姿が見苦しい。 憲法第71条は、大統領が空席になったり事故で職務を遂行できない場合、首相、法律が定めた国務委員の順序でその権限を代行するよう規定している。ただ、権限行使の範囲は具体的に明示していない。学説も「現状維持」と「全権行使」に分かれる。その間隙を埋めるのは政治の領域だ。 ところが最大野党の共に民主党が「拒否権行使は不可」と先に盾突いた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追案の国会可決の翌日、李在明(イ・ジェミョン)代表は「ひとまず(韓悳洙権限代行)弾劾手続きを踏まないことにした」と明らかにし、韓代行の拒否権行使問題については「代行の限界を抜け出さないと考える」と述べた。その後、民主党では「権限代行は大統領でない」「拒否権の乱用はもう一つの弾劾事由」などと波状攻勢を見せた。現在、糧穀管理法をはじめ農業4法と国会法・国会証言鑑定法改正案など6件の法案が先月28日に野党単独で国会で強行処理され、政府に渡った状態だ。すべて国家財政負担(糧穀法)を加重させ、企業の活動に打撃(国会証言・鑑定法)を与えかねない深刻な問題を帯びているため、十分な熟考と社会的な議論が必要だ。今週末までの拒否権行使時限が過ぎれば法施行を戻せなくなる。 国民の力は「憲法裁判官任命不可」で対抗した。韓東勲(ハン・ドンフン)前代表の辞任で代表権限代行になった権性東(クォン・ソンドン)院内代表は昨日、「尹大統領弾劾案が憲法裁判所で認容される前には韓代行の憲法裁判官任命は不可能だ」と主張した。そして共に民主党の拒否権行使排斥論理と同じく「韓代行の権限外」という理由を挙げた。憲法裁判所は裁判官9人のうち3人が空席の状況だ。大統領弾劾審判で何よりも重要なのは公正で慎重な裁判だ。それだけに憲法裁判所の立場がまず考慮されなければいけない。同日の「韓代行が憲法裁判所裁判官任命権を行使できると考える」という金正元(キム・ジョンウォン)憲法裁判所事務局長の答弁は重量感が大きい。与党が軌道を修正しなければ、戒厳を擁護して審判を遅延させるという疑いを免れないだろう。 政治的な不確実性がこれ以上、民生経済に悪影響を及ぼすようにしてはいけない。与野党が権限の解釈をめぐる争いで時間を浪費する時ではない。何が早く混乱を収拾して民生を安定させる道であるかを深く省察することを望む。