新車の慣らし運転は不要!? メーカーとエンジンチューナーとでどうして見解が食い違うのか。長く乗るならやっておいたほうが無難
愛車との距離を縮めるなら必要な儀式
ひと昔前は、新車を購入したら「慣らし運転」を行っていました。いっぽうで最近のクルマは慣らしが不要というのが定説になっています。実際問題、エンジンやトランスミッションをなじませるために行われていた、慣らし運転はするべきなのでしょうか? 【画像】少しでもスムーズで気持ちよく回るエンジンに乗りたいなら必要!「新車の慣らし」を見る(全5枚)
自動車メーカーは慣らし運転は不要の立場
クルマの部品はおよそ3万点。それぞれ生まれも育ちも違う(サプライヤーが違う)部品が、ある日、自動車メーカーの工場に集められて、あれよあれよという間に合体させられる。「ちょっと待ってくれよ。お互いもっとわかり合おう」と、時間をかけて摺り合わせる必要があると思うのは不思議ではない。 一方で、現代のクルマは驚くほど精度が高い設計・組み立てを行っているので、慣らしなど不要! という意見もある。第一、エンジンやトランスミッション、デフなどの内部は、オイルでつねにフローティングしていて、非接触状態で作動しているので、いわゆる「当たり」なんてつくわけがない。 9000回転も回るホンダ「S2000」のエンジン「F20C」のピストンの平均速度は25.2m/s(9000rpm時)もある。ピストンとシリンダーが直接接触していたら、あっという間に摩擦熱で焼き付いてしまうため、何千km、何万km走っても、摺り合わせなんて起きるわけがないわけで……。 だから、多くの自動車メーカーは「新車の慣らし運転なんてほとんど不要」という立場をとっているわけだ(各部の増し締めその他もあるので、新車登録より1カ月または走行1000kmの新車1カ月無料点検は実施している)。 それでも例外はある。 例えばBMWの「M」モデルは新車購入後、2000km走行時にディーラーにて点検を受けることが義務付けされており、これを受けないと「慣らし運転モード」(ECUの設定)が解除されない(2000km未満でも、納車後1年が経過すれば解除してもらえる)! この2000km点検で、コンピュータの慣らし運転モードの解除になり、エンジンオイル&フィルターエレメント交換、ギアオイル交換を経て、晴れてナラシ終了。封印が解かれて元気に走り回ることが解禁される(それまでは、ローンチコントロールの禁止、回転数の制限ガソリン車4500rpm/ディーゼル車3500rpm、キックダウンの禁止などの御法度がある)。