消えた「チクビ、パイ投げ」話題のハラスメントドラマからみるテレビ界“コンプラ”の是非
ドッキリもパイ投げも
素人に仕掛けるドッキリ番組もなくなった。 「当時は街中で素人に向けて無許可でドッキリを仕掛けていました。印象に残っているのは、予備校の出入り口に油をまいて、ツルツルにして受験生を滑らせるという企画。受験生で滑りたい人なんかいないわけですから、テレビで見てヒドイ企画だなと思ったのを覚えています。素人へのドッキリは、次第に出演承諾書をもらうことが必要になりましたが、この承諾書がもらいにくいということで、なくなっていきましたね」 テレビは、私たちが生活する中で関わることのない犯罪現場も映像に収めてきたが、これにもNGが出た。 「違法薬物の取引現場では、薬物を買うフリをして隠し撮りをするんです。過去にそうした現場を撮影して、流したことがありますが、隠し撮りがダメになりました。理由として、隠し撮りが倫理的にダメということもありますが、犯罪行為を目にしたら、まずは止めないといけないといわれるようになったのです」 コント番組で定番だったモノも、最近はとんと見ない。 「大量の生クリームがのったパイを顔にぶつける“パイ投げ”は見かけなくなりました。食べ物を粗末にするということがNGになったのでしょう」
2022年4月、『放送倫理・番組向上機構』(BPO)が“痛みを伴う笑い”を扱うバラエティー番組について“青少年の発達に悪影響を与える”との見解を示し、物議を醸した。 「コント番組では定番の“金ダライ”や、“熱湯風呂”や“熱々おでん芸”、さらには“ハリセン”も消えました。これにより、痛みを伴う笑いを売りにしていた芸人さんは、地上波での露出が少なくなったように感じます」 『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)や『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)など、数々の人気番組を手がけたテレビディレクターのマッコイ斉藤氏も、近年の規制の厳しさについてこう話す。 「ケガをする可能性があることや、いじめに見えるようなことは、もう極力やらないという時代になっています。僕らの若いころは、クレーン車を使って芸人さんを飛ばして海に落とす“人間大砲”や、生肉を持った芸人さんをぶら下げて大きな鍋でしゃぶしゃぶをさせて肉を食べる“人間しゃぶしゃぶ”などをやっていましたが、そういった演出は、もう完全にできなくなっています。いかにクレームがこない番組作りをするかが大切になっています」