「ドムドムしかなかったのに、いまやスタバもあるねんで」団地に住む小学生だった私の久しぶりの里帰り【坂口涼太郎エッセイ】
久しぶりの学園都市で感じた印象は…
久しぶりの学園都市は新しい建物が建っていたり、「昔はドムドムしかなかったのに、いまやスタバもサンマルクもモスもマクドもミスドもケンタもあるねんで」とおりんがどや顔で言うように、もっと住みよい街になっていたけど、なんとなく全体の印象としてはあまり変わらず、山を切り拓いた新興住宅地特有の空は広いし風は気持ち良くて山の上にいるようなのに“都市”、という心地よさは同じだった。 私はアミティという団地の5階に住んでいて、窓を開ければ夏でもクーラーがいらないほど涼しい風が吹いて、吹きすぎてたまにスーパーの広告や学校でもらったプリントが飛んでいくほど風通しのいい部屋だった。 その団地の入り口で小学生のときから学校が終わったらおりんと何時間だって話していて、涙が出るほど笑っていたあの時間を再現して「うちらなんも変わってないでほんま! ぴちぴちや!」とか言いながら写真を撮っていたらちょうど小寺小学校の小学生たちが下校してきて、わいわい言いながら団地の前ではしゃいでいる大人二名を横目で見ながら「へん、たい? つう、ほう?」というワードが頭の中で浮かんでいそうな表情をしながら通り過ぎ、ちょっといまお縄になっては困るので、そのまま「あかみち」と呼ばれていた赤い道の沿道に茂っているいちょうを見ながら、ここで見る夕日が私の記憶で一番美しい夕日だった陸橋を渡り、校舎がピンク色をしている小寺小学校へ向かった。 運動会のとき藤井隆さんの「ナンダカンダ」が流れて一緒に踊ってたなとか、小学校の前にポン菓子のおっちゃんがいて、売り物にならないポンをくれたなとか、男子は半裸で組体操してたけど、いまもあれやってるんかな、ただただ痛かったし、恥ずかしかったなとか、いろんなことを話しながら歩いて、キャンパススクエアというスーパーなどが入った商業施設にある学校帰りによくお世話になっていたスナックランドというクレープ屋に行ってクレープを食べた。おかず系と甘い系を選べなかったので両方買って、変わらずおいしいとか言いながら今度は太山寺中学校に向かい、あそこの西公園はこんなに学校と近いのに告白スポットやったなとか、あたしも告白されたわ、おれは一度もされへんかったわ、とか、校庭こんなに広かったっけ、リレーとか走るの長くて大変やなとか言いながら中学校の前に到着すると吹奏楽部が練習している音がして、私もあそこでアルトサックスを吹いたり、吹かずにゴリエ踊ったり、マツケンサンバ踊ったり、なんか踊ってばっかりやったなとか、色々感慨に耽りながら、「変わらへん変わらへん」言いながらキャンパススクエアに戻り、スタバってやっぱりおしゃれやなと言いながらコーヒーを買ってベンチに座ったそのあとに、「変わらへん」とはどういうことか、私はゆっくり知ることになる。 〈…次回に続く!〉 <INFORMATION> 坂口涼太郎さん出演 映画「アンダーニンジャ」 2025年1月24日(金)公開予定 文・スタイリング/坂口涼太郎 撮影/田上浩一 ヘア&メイク/齊藤琴絵 協力/ヒオカ 構成/坂口彩
坂口 涼太郎