若隆景、1分半の熱戦制し2場所連続2桁星へ突き進む けがで幕下からはい上がった苦労人が地元福島の後押しにも応える【大相撲秋場所】
◇16日 大相撲秋場所9日目(東京・両国国技館) 1分半近い熱戦への大歓声と拍手の中心で、若隆景が翠富士を土俵下まではじき飛ばした。立ち合いで右を差して小兵のの動きを封じ、圧力を掛け続けてもろ差し。切れ目ない攻めで完全復活の気配を感じさせる寄り切りで、2敗を守った。 「根負けしないように、最後まで集中してやるだけだった」と淡々。相手の必殺の肩透かしも封じて「止まった時点で頭に入れ、下から(攻める)という意識でいけた」と振り返った。 日に日に高まる声援は、好成績だからだけではない。苦しんではい上がった背景を皆が知っているから。関脇だった2022年春場所で初優勝するも、翌年に右膝を痛めて手術。3場所の全休を含む4場所連続休場を強いられた。 再起は幕下からだった。自身と次兄の若元春の応援グッズを扱い、長兄の幕下若隆元も含めた史上初の3兄弟同時関取誕生を後押しする地元福島市の福島県観光物産館も揺れた。若隆景グッズの供給はストップ。撤去の選択肢もあったが「相撲から勇気をもらっている。番付は関係ない」と同館。十両に返り咲くまで、残った在庫を並べた。 後押しに応えるのは、言葉じゃなく行動。土俵外でも一貫している。21年の販売コーナー開設時、若隆景は3兄弟で一番乗りで色紙を届けた。6月の福島合宿中も足を運び、時間ギリギリまでファンと写真撮影した。 師匠の荒汐親方(元幕内蒼国来)も、表情から「『ここから』というのを本人もよく分かっている」と精神的な充実を感じ取っている。「期待に応えられるように、自分らしい相撲を取って頑張りたい」と若隆景。まずは勝ち越し。そして、三役復帰につながる2場所連続の2桁勝利へ突き進む。
中日スポーツ