バンド×百合で魅せるアニメ『ささ恋』キャラ歌唱はCVと異なるキャスティング!オーディション初抜擢で務めた笹倉かなさんの熱い想い【インタビュー】
依の歌声に込めた想い「テクニックや歌唱力を前面に出しすぎるのは違う」
――先行上映会でステージを拝見したときは、クールな方なのかなという印象を受けましたが……。 全然違うんですよ!(笑) 心の内はてんやわんやでした。 ――そうだったんですね。ちなみに、依の歌唱担当として、どのようなことを大事にされていますか? 依ちゃんは自分には歌しかなかったというくらい歌に対して思い入れが強く、ひまりちゃんが“ひとめぼれ”するくらい歌に魅力がある子なので、その魅力はなんなのか、どういうふうに歌えばいいのか最初はすごく悩みました。特にレコーディング前、練習しているときはうまく歌おうとしすぎたのか、気持ちが伝わりにくくなっているなと感じたんです。 依ちゃんは純粋に歌が好きな子なので、テクニックや歌唱力を前面に出しすぎるのは違う、むしろまっすぐに気持ちを伝えていくような歌い方がいいと思ったんです。恋に興味のなかった依ちゃんが初めて人を好きになる。そのときの初々しい気持ち、純粋な気持ちを、鮮度を保って皆さんにお届けしたいと考えました。 ――気持ちを前面に出していくような歌い方ですか? そうですね。ただ、感情を込めすぎても伝わらないことがあるので、その塩梅を探りながらレコーディングに臨みました。 ――では、第6話までに登場した楽曲について伺えればと思います。まずはオープニングテーマ「Follow your arrows」についてはいかがですか? 最初に楽曲をいただいた瞬間、「なんて王道のアニメソングなんだ!」と思いました。イントロの時点で物語の始まりを感じますし、明るいけれどどこか切なさがあって。歌詞のついていない状態なのにシンセのメロディーを聴いただけで泣いてしまいました。それぐらい黒須(克彦)さんのメロディーに力があったんです。 藤林(聖子)さんの歌詞も「ささ恋」を象徴する美しい歌詞だなと思いました。「arrows」は「矢印」という意味なんですが、依ちゃんからひまりちゃん、ひまりちゃんから依ちゃんの気持ちにくわえ、いろいろなキャラクターの思い、矢印をこの「arrows」のひと言で表しているんです。悲しみのない世界に連れていくという、歌詞のスケールが大きくなるところもグッときますし、大きな愛を感じました。 ――「Follow your arrows」で、特に気に入っている部分はどこですか? 2サビのあとのDメロがすごく好きです。ディレクターさんからは「この楽曲はDメロが肝だから、音程やリズムも大事だけど、荒々しくてもニュアンスや感情が乗っているテイクをあえて採用した」と伺いました。確かに、歌詞とメロディーと相まってグッとくるDメロになったなと思います。 ――では、第1話の劇中歌「Humming Love」はいかがですか? 最初にお話ししたように、「Humming Love」は「ささ恋」で最初に触れた楽曲でした。依ちゃんの歌唱担当に決まる前から知っている楽曲なので、やっぱり思い入れも強いです。 ――オーディションのときとは歌詞が変わったそうですね。 より「ささ恋」の世界がわかりやすく表現された歌詞になって、SSGIRLSの楽曲でもありつつ、「ささ恋」全体を表すような楽曲でもあるなと感じました。これまで作家さんにディレクションをしていただく機会がなかったので、黒須さんにレコーディングのディレクションを担当していただいたのも思い出深いです。私が緊張しない環境を作ってくださって、とても感謝しています。 ――「Anime Japan 2023」で初披露されましたね。 オーディションの楽曲でもあり、最初に皆さんの前で披露させていただいた楽曲でもあるので、「Humming Love」と歌人生を歩んでいるような感覚です。今でも一緒に成長していけたらいいなと思っています。 ――依を演じる瀬戸麻沙美さんとシームレスに繋がっている歌声にも驚きました。 そう言っていただけるのが嬉しいです! 自分の声をまだ客観的に聴くことができないので、最初は不安があったんですが、そういう反響をいただけてホッとしました。 ――同じく、第1話の挿入歌「オレンジに染まった大空」についてはいかがですか? こちらもオーディションで歌った曲で、とても馴染みの深い曲です。オーディションから本番のレコーディングまでは少し期間が空いたんですが、オーディションで制作の方によかったと褒めていただいていたので、自分らしく、依ちゃんらしく、自信を持って歌うことができました。 ――こちらは笹倉さんご自身が作詞をされていますね。 初めて作詞をさせていただきました。作詞の段階ではどういうシーンで使われるか詳細に伺っていたわけではないんですが、弾き語りの曲ということで原作第1巻の屋上のシーンが思い浮かんだんです。そのシーンが個人的に好きだったこともあり、屋上から見える夕焼けをテーマにしながら書かせていただきました。 ――タイトルも笹倉さんが考えたんですか? そうなんです。歌詞を書いていく中で夕焼けをどう表現しようかと思ったときに、ふと「オレンジ色に染まった大空」という言葉が浮かんだので、これをタイトルにしました。アニメの中の夕焼けがとても綺麗だったので、このタイトルにして本当によかったです。 ――ひまりが屋上に来るときに、依が歌っていた「屋上のメロディー」もありました。こちらは笹倉さんが作曲されたんですね。 ハミングで弾き語りする曲を作ってくれませんかというご依頼で作った楽曲です。「ちょっと作ってみようか」とベッドにあぐらをかいて作曲したんですが、このシーンの依ちゃんもまさに「ちょっと弾いてみようか」という雰囲気で演奏していたので、絶妙な繋がりを感じて嬉しくなりました(笑)。 ――そして、第6話ではついに「Sunny Spot」が披露されましたね。 原作ファンの方にとっては絶対に思い入れの強い楽曲なので、私も完全燃焼する気持ちで歌おうと意気込んだ楽曲です。レコーディング前から自分にとって大切な楽曲になるだろうなという予感があり、デモ曲をいただいたときはその思いが確信に変わって鳥肌が立ちました。 どちらかというと私は心の内を吐き出すような楽曲を歌うことが多く、ここまでストレートに大切な人への気持ちを表現した楽曲は初めてだったんです。きっと「ささ恋」に関わって、依ちゃんの歌唱を担当しなかったら「誰かを思う気持ち」を歌う機会もなかったと思います。大切な人に歌を届けること、歌う意味とは何か……そういうものを考える機会をいただけて、私にとっても大好きで大切な楽曲になりました。 ――笹倉さんにとっても一つのターニングポイントになるような楽曲になったんですね。 そうですね。「ささ恋」と「Sunny Spot」に自分を変えてもらえたような感覚になりました。ただ、思い入れが強すぎたのか、レコーディングでは気持ちが入りすぎてしまい、最初は念のこもった重々しい雰囲気になってしまって(笑)。依ちゃんとひまりちゃんの恋を表現した、爽やかで純粋でキラキラした楽曲にしたいと思っていたので、レコーディングの中で修正していきました。 ――とても心が温かくなる楽曲でした。 喜介さんの歌詞が素敵で、「ひまり」と「ひだまり」が掛かっているところが特に好きです。Dメロもすごくいいので、ぜひフルサイズも聴いていただきたいですね。