山崎育三郎さん、色香漂う着物姿「いつか、ブロードウエイで日本発の作品を作りたい」日本文化×演劇に挑戦する意義
"プリンス"として輝き続ける山崎育三郎さん。冬のお出掛けを彩るしゃれた装いを情感豊かに楽しまれました。
開口一番「着物っていいですね!」と爽やかな山崎さん。「着物を着ると、地に足が着くというか、地面を踏み締めて立てる感覚があります。気持ちまで浮つかず凜としますね。ひと口に着物といってもそれぞれに個性があるのを感じました。コーディネートから受けるインスピレーションに従って、動いてみました」とおっしゃるとおり、装いが変わるごとに物腰が変化し、新たなシーンが生まれます。 <写真>鈍く照り映える鬱金色に、「まるななこ」と呼ばれる綾織の緻密な模様が美しい黄八丈の着物。合わせたのは、草木染による糸を地機で織り上げた兵児帯です。兵児帯というと、浴衣のイメージがありますが、こちらは染織作家・杉森繭子さんが手掛けたこだわりの逸品。ふっくらとやわらかで上質な風合いが、大人のカジュアルスタイルへと導きます。 このコーディネートのポイントが兵児帯とお伝えすると、山崎さんはクルっと背を向けてポージングしてくださいました! 着物、帯すべて/太田和 帯制作/杉森繭子
日本の文化を世界の演劇に。着物で演じる特別な作品です
その多彩な表情が象徴するように、活躍の場も舞台はもちろん、ドラマや映画、音楽、司会業に至るまでいまやオールラウンド。 「ミュージカル界で若いころから成熟したお客さまの前に立ち、歌にトークに演劇にと鍛えられましたからね。なんでもやってきたことがいまにつながっています」 一つ一つの道を究めて、次なる章の始まりとなりそうなのが、来春より始まるミュージカル『昭和元禄落語心中』です。 「もとはテレビドラマとして出合った作品です。天才落語家の役ですが、当時はミュージカル『モーツァルト!』の公演の最中で。その舞台に立ちながらいくつも落語を覚え、しかも天才の域に達しなければならない。大変でしたが、自分にとって特別な作品となりました」と振り返ります。 <写真>灰桜色の御召の着物に仙台平(せんだいひら)の袴を着け、市松地紋が艶やかに浮き立つ煤竹(すすたけ)色の羽織を合わせた装い。きりりと締めた袴の腰から覗く、赤紫色をアクセントに利かせた角帯が、凜とした佇まいに男性の色香をさりげなく添えています。 着物と帯、羽織、袴、小物一式/銀座もとじ男のきもの
それから6年、念願叶っての舞台化となりました。 「ストーリーも音楽もよいですし、3千人ものお客さまの前で落語という芸能を成立させられたなら、新しい演劇が生まれるはずです。僕はいつか、ブロードウエイで日本発のオリジナル作品を作りたい。今回はその足掛かりになるチャレンジだと思っています」 日本文化を礎に、いよいよ世界の演劇人へ。きっとその壮大な旅へ、着物も一緒に連れて行ってくださるでしょう。 撮影=KINYA ヘア&メイク=朝岡美妃(Nestation) 着付け=石山美津江 撮影協力=バックグラウンズ ファクトリー 『美しいキモノ』2024年冬号特別版より