インハイ初V目指す昌平
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)埼玉予選は、昌平が2大会ぶり5度目の優勝を遂げて閉幕した。全国でも最高水準の戦力を誇る才能の宝庫だけに、本大会で頂点を極める可能性は十分ある。 【フォトギャラリー】昌平 vs 西武台 初戦の3回戦から決勝までの4試合で18得点・2失点という数字も見事だが、すべての試合で対戦相手をきりきり舞いさせた攻撃は圧巻だった。過去4度優勝したチームをしのぐ強さではないだろうか。 昨季までの4-2-3-1から配置を4-3-3に変え、主将の大谷湊斗(3年)をアンカーに起用して攻撃の初手を担ってもらった。 大谷がボールを預かるとまずドリブルで前進し、相手を引き付けて守りを混乱させるパスを出す。あるいは切れ味抜群のドリブルでさらに突き進んでマークをはがすか、旺盛にシュートを狙うかだ。右利きだが、キックの威力と精度は左足も見劣りしない。縦パスを打ち込む意識も常に持っている。 昌平のスペシャルコーチに昨春就任し、今年3月から指揮を執る元日本代表の玉田圭司監督は、「このチームの中でも大谷は特別な存在。状況を変えられるし、決定的な仕事もできる代えの利かない選手ですね。攻守の心臓」と言って、その才能を高く評価する。 大谷と逆三角形を形成する2人も、うなるほどのうまさがある。 現在暫定3位の高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ2024 EASTで、横浜FCユースとの開幕戦から全試合に先発するMF本田健晋(3年)の技術とドリブルは一級品。もうひとりの三浦悠代(3年)も技巧派のMFで、プレミアリーグでは得点ランク4位タイの4ゴール、インターハイ予選では毎試合の5点を挙げた。 三浦は「湊斗と健晋が同じピッチにいる時は、ふたりがゲームをつくってくれるのですごくやりやすい」とありがたがる。 さらに5得点でプレミアリーグ首位タイのMF長瑠喜は軽やかなドリブルと決定力、FW山口豪太は力強い持ち運びとパンチ力のある左足が魅力的だ。この2年生コンビの実力も高校生の域を超えている。 今大会5ゴールを記録したエースFW鄭志鍚(3年)の成長も大きく、シュートばかりかスルーパスをはじめ、周りを使うのも上手になった。左の上原悠都(3年)、右の安藤愛斗(2年)両SBの豪胆な攻撃参加もチャンスを膨らませる強力な武器のひとつ。 昨季からの守護神である佐々木智太郎(3年)は、シュートストップとハイボールに自信を持つ188センチの大型GKだ。 各ポジションに全国レベルの好素材を配置し、それがグループとして機能するのだから対戦相手は対策に苦慮し、戦ってみると力の差を痛感することになる。 顔を合わせた4校の中では最も力があると思われた西武台でさえ、13本のシュートを打たれて5失点。どのチームもつけ入るスキがなかったわけだ。 チームの心臓部と言われる大谷は、「今年はキャプテンなので、これまで以上にやらないといけないし、ほかの選手との違いも見せたかった。点を取らないと評価されないので、ゴールを奪うことにはこだわっている。初戦の西武文理戦以外は圧倒できたと思います。インターハイでも圧倒して初優勝したい」と話した。 昌平はこれまでインターハイに4度出場し、ベスト4に3度進んでいる。初出場の2016年は市立船橋(千葉)に0-1で敗れ、18年は桐光学園(神奈川)に2-3で屈し、22年は帝京(東京)に0-1といずれも関東勢に1点差の敗戦だった。 今年のチームは過去最強かもしれない。初優勝の可能性は十分ある。玉田監督は「個(の力)は全国トップ。もちろん優勝は狙いたいが、インターハイまでにもっと詰めないといけないこともある」と述べる。 今大会は初戦と決勝で計2失点したが、いずれもPKからだ。指揮官は「失点を受け入れてはいけない。PKで始まりPKで終わったことを今後の教訓にしてほしい」と4戦快勝したことよりもPKで先制され、PKで完封を逃したことを課題に挙げた。少しの甘さも容認せず、本番までの約1カ月で、真夏の決戦を勝ち抜けるチームに仕上げる覚悟だ。 (文=河野正)