おせち料理や脂の乗ったサンマ…実は “水引” !? 水引作家・森田江里子さんの「かわいい水引」
のし袋やお正月飾りなどで年末年始に見かけることが多くなる「水引細工」。近年では伝統工芸だけでなく、アクセサリーやオーナメントなどさまざまな楽しみ方でも注目されている。そんな中で『季節をむすぶ かわいい水引 新装版』(ブティック社)などで知られる水引作家の森田江里子さんに、水引細工の魅力と基本の結び方を教えてもらった。 【写真】リアルすぎるサンマ、お寿司、辰……驚きの森田江里子さんの作品世界 ◆ ◆ ◆ 「水引細工をやる人は手芸の中でもそんなに多くないのですが、最近はじわじわ人気が出てきていると感じますね」という森田さん。2006年に水引細工を習い始め、2007年から京都を拠点に水引作家として活動を続けています。水引細工にハマったきっかけは? 「きっかけが思い出せないくらいいつの間にか出会い、“かわいいな、習えるのかな” という感じで調べてすぐに習い始めました。もともと書道をやっていた時にかな文字が好きだったり、細い線が好きだということはあったかもしれません。最初は貯金を削りながら手作り市などで作品を販売し、3年くらいしたら教室が増えてきて創作活動に専念できるようになりました。私が水引細工を始めた頃は数えるほどしか作家さんがいなかったのですが、今はSNSやハンドメイド販売サイトなどを通じて作品を発表する人が増えている気がします」 そもそも「水引」は何からできているのでしょうか。 「素材は和紙でできています。2cm幅くらいの和紙をよって、こよりにしたものに水のりを引いて固めたものです。よく見かける紅白の色水引は表面に着色していて、金や銀の水引には1mmくらいの紙が巻いてあります。手芸用の水引には糸が巻いてあって、引っ張るとくるくると糸が出てきます。最近はキラキラ光る水引などもありますが、基本は水のりで固めた和紙にいろいろな素材が巻いてあるんです。長さは90cmで手芸店やホームセンター、100円ショップなどでも扱っています」
祝儀や不祝儀で使うのし袋やお正月飾りなどのイメージのある水引ですが、結ぶことに特別な意味はあるのでしょうか。 「水引は神事にも関わっているんですけど、例えば『あわび(あわじ)結び』は貝のアワビを表していて、中国では古くから不老長寿の食べ物として珍重され、日本でもアワビは古来より天皇家への奉納品や土地の神様に対する供物に使われる貴重な食材。ご祝儀袋の右上についている “のし” はもともとアワビを干したもので、お祝い事に “ナマグサ(生の肉や魚)” を添える風習が起源です。祝儀袋の水引が5本取りなのは、手と手を結ぶことを表しているともいわれ、手芸としてかわいいだけではない奥深い意味を持っています」 水引細工を始めるのに必要なものは? 「はさみはクラフト用があればなおいいですが、素材が紙と糸なのでどんなはさみでも大丈夫です。あとは平やっとこと、目打ちがあれば細かい作業に便利です」 重箱に入ったおせち料理や、脂の乗ったおいしそうなサンマなど驚きの作品を結んでいる森田さん。着想はどこから? 「最初はお花や鶴、亀など定番のモチーフ(題材)を作っていたんですけど、だんだんそれでは飽き足らなくなって。食べ物を作ったら反応がよかったりして自分も楽しいので、ケーキやおせち料理など意外性のある作品を作るようになりました。食品は生徒さんにも人気が高くて、焼き目の銀がキラキラした結構リアルなサンマや、“えーっ、水引でこんなものができるの!?” というようなモチーフをいっぱい作っています(笑)。水引は色も400~500色くらいあるので、“こういうものを作りたい” と思ったらそれに似た色の水引を探します」