一村通じ奄美の魅力語る 奄美市でフォーラム 評論家やアーティストが登壇
奄美で晩年を過ごした日本画家、田中一村が演題のフォーラム「未来へつなぐ田中一村」が6日、鹿児島県奄美市名瀬のアマホームPLAZAであった。一村研究の第一人者で美術評論家の大矢鞆音(ともね)氏(86)の基調講演や島外出身アーティストによる座談会、地元高校生のスピーチなどがあり、登壇者らは200人を超える聴衆に向け、一村と奄美の魅力を語った。 アートの島を目指す任意団体フォーラム奄美24実行委員会、市教育委員会、奄美に拠点を持つ大正大学(東京都)による共催。 一村は栃木県出身。1958年に50歳で単身奄美大島に移り、69歳で死去するまで奄美の自然や生き物を描き続けた。大島紬の染色工として働き、蓄えができたら絵を描いていた。
大矢氏は一村が奄美で暮らした時期が大島紬の隆盛と重なったことに触れ「紬産業と、豊富な亜熱帯の植生が今日の一村を在らしめた」と指摘。奄美時代の画風を「1人で描いたことで隅々まで完璧に描いている」「(姉らが死去した)昭和40年を挟んで、(奄美前期の)旅人としての目線から変化し、住まい人として沈潜して描いた作品が多くなった」と解説した。 座談会は、奄美と東京の2拠点生活を送るタレントのIMALUさん、奄美在住の俳優・映画監督の國武綾さん、版画工房アーティー(東京都)代表の加藤泉さん、奄美の魅力を発信するカメラマンの山辺純平さんの4人が登壇。島外出身者の目線で自然や人など奄美の魅力をそれぞれ語った。 一村の作品を原画とした版画を手掛ける加藤さんは今後の展望を問われ「何を描きたかったのかなど絵と会話することがアートの本流。一人一人がトライして、田中一村という文化を誇れるようになってほしい」と期待を込めた。
地元大島高校美術部、書道部、奄美高校美術部の生徒は「アートの島に生まれて」と題してスピーチ。一村の絵や奄美の自然、書道を通じた自分の表現などそれぞれの思いを伝えた。 瀬戸内町から来場した古仁屋中学校美術部の生徒は「高校生や島の外の人の話を聞くことができてよかった。島の中で自分がいいと思ったところや、気付いたところを大事にしたい」と話した。