1分間最強こそケンカ最強ーー異色の格闘ドキュメント・ブレイキングダウン、仕掛け人が語る「幻想」の価値
なぜ“1分”か。「幻想」を生む理由
自身も格闘技を学び、プロレスラーとしてデビューしたこともあるYUGO氏は「1分ルール」の魅力を「幻想が生まれること」だと見ている。 「今の格闘技はルールが整備され、技術や戦略が確立されています。総合格闘技でも、専門のスキルに長けた人間が優位なのは間違いない。だから“空手と相撲、どっちが強いんだろう”といった異種格闘技戦的な興味がわきにくいんです」 だが1分の闘いであれば“スタミナ無視のラッシュで押し切って、アマチュアがプロに勝つかもしれない”“このルールならやっぱり相撲が強いかも”といった興味が出てくる。それが“幻想”だ。また1分ルールの原点は、朝倉未来の「路上の喧嘩は1分間で終わる。短時間で終わらせないと警察が来てしまう」という発想にある。 「だから1分間最強こそ喧嘩最強という考え方もできる。そこに“幻想”が生まれます」 1分で勝つには攻めまくるしかないから、自然と闘いがアグレッシブになる面もあるようだ。だが、ルールの独自性と試合の面白さだけでブレイクできるほど、格闘技もYouTubeも甘くはない。 「我々としては、格闘技の裾野を広げたいという思いがありました。格闘技に興味がない人にも見てほしいと。でも格闘技に興味がない人は“1分間の闘いって面白そうだから見てみよう”とはならないんですよね」 そこで『BreakingDown4』(第4回大会)から導入したのが、オーディション制だ。出場者を一般公募し、オーディションでそれぞれが自己アピールを展開する。その中で参加者同士の口論、煽り合いがあり、時に乱闘も勃発し、「だったら試合で白黒つけようじゃないか」と対戦カードが決まっていく。
すべてが「因縁」のカード、起承転結を生むドラマ作り
ブレイキングダウンの対戦カードは、ほとんどがオーディションで生まれた“因縁の対決”なのだ。他競技ではランキング2位と3位が闘ってタイトル挑戦権を獲得するといったシステマチックなカード決定もあるが、ブレイキングダウンはドラマ(因縁)ありき。だから視聴者はドキドキするし、試合という決着の場を見逃せなくなる。因縁勃発から勝者と敗者が決まるまでの起承転結が用意されているわけだ。 「見ている人が感情移入するのは“誰が闘っているか”という部分なんです。“何を言ったかより誰が言ったかが大事”みたいなものですね。オーディションを通して、見る人は選手がどんな個性の持ち主で、どんな人生を歩んできたかを知ることができる。感情移入しやすいんです。参加者はそれぞれ何をアピールするか、いわば個々の“脚本”を持ってオーディションに来ます。だから僕らも予想ができない人間ドラマがある。しかも試合をするわけですから、生まれたドラマ、因縁に必ず決着がつく。そういう意味でも面白いコンテンツだと思います」