日置5人殺害 「犯行時、被告は重度の統合失調症だった」控訴審で新鑑定医が主張、一審と意見分かれる 高裁宮崎支部初公判
2018年に日置市東市来町湯田で、男女5人を殺害したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われ、一審鹿児島地裁で死刑判決を言い渡された岩倉知広被告(45)の控訴審初公判が30日、福岡高裁宮崎支部(平島正道裁判長)であった。責任能力の有無が争点となり、控訴後に被告を精神鑑定した医師は「犯行時、重度の統合失調症だった」と主張。起訴後に「妄想性障害」と鑑定し、一審で認められた医師の意見と分かれた。 20年12月に死刑判決…控訴審の争点は責任能力の有無か 日置5人殺害、30日に高裁宮崎支部で初公判
弁護側が請求し、裁判所が鑑定を依頼した東京科学大学の安藤久美子氏は証人尋問で、被告は06年ごろに統合失調症を発症したと指摘。一連の犯行を「被告の現実的思考と病的思考を切り離して説明することは難しい」とした上で、「男女3人の殺害は、統合失調症の影響を受けている」とした。 妄想性障害と診断した鹿児島大学医学部の赤崎安昭教授も出廷。鑑定では、統合失調症に特有の症状はみられず、「控訴後の鑑定は、裁判で出た証言に被告が影響されるなど、前提の異なった条件で行われている」と説明した。 裁判所は、弁護側が請求した被告人質問を却下。弁護側は「被告は心神耗弱だった」として、原判決の破棄を求めている。次回公判は12月24日にあり、弁護側、検察側双方が2人の鑑定を踏まえて意見を述べる。 一審判決によると、岩倉被告は18年3月31日から4月1日、祖母方で、父親と祖母の首に左腕を巻き付けるなどして窒息死させ、近くの山中に遺棄。同6日には、安否確認に訪れた伯母とその姉、伯父の知人を同様に窒息死させた。
南日本新聞 | 鹿児島