桜の開花「今年は遅かった」と思う人に教えたい意外な真実 地球温暖化が与える思わぬ影響を「数学」で解析
では、何が問題なのか。桜の花が満開になるまでの過程は、花芽形成→休眠→休眠打破→成長→開花→満開という流れになっています。花芽形成は桜が咲く前年の8月から9月はじめごろの間におきます。満開の時期から考えると、半年も前から芽が生え始めているのですね。 その後、桜は休眠に入ります。休眠の程度は10~11月ごろにもっとも深くなり、その後徐々に浅くなっていきます。この休眠から目覚めていく過程を「休眠打破」と言うのですが、この「休眠打破」に、地球温暖化が大きな影響を与えているのです。
休眠打破とは、桜が秋から冬の寒さによって目を覚ますことを指します。桜は暖かい気候によって目覚めているのではなく、むしろ逆で、芽が休眠から起き上がるには十分な寒さが必要なのです。 休眠打破が行われるのに必要な寒さの量を「低温要求量」といい、ソメイヨシノの場合は10月以降、8度以下の寒さに約800~1000時間さらされる必要があると推定されています。つまり、地球温暖化によって冬季期間の気温が下がらない状態がずっと続くと、この休眠打破が十分に行われず、桜が開花しない恐れがあるのです。
■2100年には桜がまったく咲かない地域も 2020年には、福島県福島市と宮城県仙台市で、鹿児島県よりも早くソメイヨシノが開花するという出来事がありました。平均気温や緯度などを考えるとありえないこちらの報道はとても話題になりましたが、これも原因をたどると地球温暖化にあることがわかるのです。 このままのペースだと、2100年には種子島や鹿児島県の西部では桜がまったく咲かず、九州南部や静岡県、神奈川県の一部でも桜が満開にならない可能性があると推測されています。地球温暖化の影には、ただ桜の開花が早くなるだけではない重大な問題が隠されていたのです。
物事の理由を考えるうえで、数値を分析することは非常に重要になります。この力を育むために、高校の数学においても「データの分析」の学習範囲は年々幅広くなっています。データを正確に分析し、物事に対応するためにも、数学の力は必要不可欠なのです。
永田 耕作 :現役東大生・ドラゴン桜チャンネル塾長