大正製薬「非上場化」の対価が7100億円では「安すぎる」と株主が憤慨、「集団訴訟」に発展する可能性
安すぎるTOB価格
「リポビタン」や「パブロン」で知られる国内市販薬最大手の大正製薬ホールディングス(HD)が、4月9日で上場廃止となった。「鷲のマーク」が登場するテレビCMなどは継続されるが、同社のファンになっても株式を購入することはできない。 【写真】「日産・ホンダ連合」が次に協業を狙う「老舗メーカー」 創業家が代表を務める会社「大手門」が、MBO(経営陣が参加する買収)の一環として行なっていたTOB(株式の公開買い付け)は今年1月15日までに成立した。それを受けて3月18日に開催された臨時株主総会で大正製薬HDの発行済株式8203万6081株は3株に併合された。 株主は、上原明・大正製薬HD社長の息子の茂、治、健の3兄弟のみ。長男で大手門の代表と大正製薬HD副社長を務める茂氏が、今後、大正製薬HD8代目社長となる。 筆者は、TOB成立直後、<大正製薬が7100億円規模の「上場廃止」で「守ったもの」>(1月18日配信)と題し、このTOBが「中興の祖で3代社長である上原正吉のDNAを生き続けさせるためのもの」と書いた。 物言う株主のアクティビストやPBR(株価純資産倍率)1倍以下について改善を迫る東京証券取引所などの“雑音”に耳を貸さないで済む。上原正吉のいう「勝つためには、即断、即決、即効がなくてはならない」という経営戦略を実行できるのである。 ただ、そのためには株主に対して代償を払わなくてはならない。少数株主をスクイーズアウトという形で強制的に買い取って追い出す以上、高値買い取りが条件だ。大手門のTOB価格は1株8620円。PBRは0・85倍。つまり会社を解散して全株式を分配した方が株主の利益となる。 あまりに安過ぎる――。 不満を募らせた少数株主が、4月1日、「大正製薬HDの少数株主の会」を立ち上げた。4人でスタートし、代表や会則などはまだ定めていないが、法的手段に訴えることも考えており、仲間を糾合している段階だ(連絡先はtaisho.squeeze.out@gmail.com)。