「インサイド・ヘッド2」ヒットの理由は?キスマイ宮田らの高評価に呼応し共感拡大 INIファン達の“推し活”も好影響 作中でも“推しキャラ”登場など時代にマッチ
ディズニー&ピクサーの劇場公開最新作「インサイド・ヘッド2」(2024年)の世界興行収入が8月12日までに15億9447万2085ドルを突破。これまでアニメーション映画としてトップに君臨していたディズニーの「アナと雪の女王2」(2019年/14億5400万ドル)を抜いてアニメーション映画史上興行収入歴代1位の快挙を達成した。日本でも8月1日に公開されると18日間で2024年の洋画作品の中で最速の興行収入30億円超えを果たすと、その後も勢い止まらず8月29日までに累計動員318万734人、累計興行収入40億6578万9520円を記録し、前作の最終興収(40.4億円)を上回った。なぜ本作がヒットしているのか理由を探ってみた。 【写真】斬新な姿に釘付け!キスマイ宮田の“推しキャラ”ポーチー ■「インサイド・ヘッド2」とは? 同作は、「第88回米国アカデミー賞」で長編アニメーション賞を受賞した「インサイド・ヘッド」(ディズニープラスで配信中)の続編。アメリカなど世界各国では6月14日から公開され、世界興行収入ランキングで2024年度のトップになっただけでなく、同歴代ランキングでTOP10内にランクイン。あの大作ヒーロー映画「アベンジャーズ」(2012年)を抜いたのだ。もちろんアニメーション映画としては史上最高記録を更新し続ける大ヒットとなっている。 物語は前作で小学生だった明るく元気な女の子・ライリーが高校入学(アメリカの制度では高校は14歳からの4年制が多い)を控えたティーンエージャーに成長。1作目と同様に様々な“頭の中の感情”がキャラクターとして登場するのだが、これまでの「ヨロコビ」や「カナシミ」などに加え、「シンパイ」「ハズカシ」「イイナー」「ダリィ」といった大人の感情たちが新たに姿を現し、思春期特有の悩みや葛藤が描かれている。 ■老若男女が共感するストーリー・設定 ティーンエージャー、特に日本で言うところの中学生から高校生にかけては将来の方向性の岐路が迫る世代。思春期真っただ中のライリーの心のざわめきは、同世代のみならず自らも思春期を乗り越えて大人になった人たちにも共感を呼びやすいものになっている。特に鑑賞した大人たちから「シンパイやハズカシの行動にも共感」「私がライリーぐらいの頃もそうだった」「思春期あるあるかも」「中学時代を思い出した」などの声も散見される。 前提として「話題になっているから見たけど、登場人物や設定に共感できない」となるとヒットにはつながらない。やはり見た本人が共感して初めて他人にその気持ちを伝えたい、拡散したいと思うし、自ら何度でも見返したくなる。特に大人になればなるほど、自分に関係ない世界に対して“共感”を覚えることは少なくなり、一抹の寂しさを感じている人もいるのでは。だからこそ、キャラクターにしろ、ストーリーにしろ、共感できる作品はいつまでも心に残る。 もちろん今作はピクサーアニメということで老若男女誰でも入りやすい作品になっているのも大きい。現ピクサーのチーフクリエイティブオフィサー(CCO)を務めるピート・ドクター氏から託され、今作の監督を務めたケルシー・マン氏は当メディアの取材で「私も10代の子どもを持つ父親ですが、『家族全員で見に行きたいと思う映画は、実はあまりない』と思っています。多くの映画は、ある特定の年代の人、ある特定のグループをターゲットにしている。ただ、ピクサーの映画に関しては、どの年代の家族でも全員が楽しめるものにしたいと考えて製作しています」と話していたが、まさにここにもヒットの理由があると思う。 言われてみると現在、上映スケジュールを見渡しても「これは家族と見に行きたいなあ」と思う作品は少なく、あったとしても「子どもが行きたがっているから行ってみるか」という域を出ない。だが今作は子どもにとっては等身大の、親世代には懐かしい、あるいは現在進行形の親子関係を省みることができるので、家族それぞれの目線でも楽しめる。親の心情としても必要以上に暴力的であったり、性的であったり、目を覆うような描写がないので、子どもに悪影響を与えるシンパイもないし、気まずい思いをすることもない。帰る頃には「こんな家族・友人関係もイイナー」と、みんながヨロコビに満ちた表情になっている。 ■“推し活”ブームもヒットにつながった 思春期のライリーには“秘密の推しキャラ”がいるが、日本も今や“推し活”全盛の時代。何なら自分が“推している人が推している人(キャラ、作品)”までも「推しの推しは(自分にとっても)推し」精神でまとめて推してしまうくらい。そのおかげで推しが多い人の財布事情は大変そうだが、だからこそこの映画のヒットにも一役買っているのではなかろうか。 例えば、ディズニー大好き俳優で知られる風間俊介は「この映画はライリーとその感情達の物語であるのと同時に、私たちの物語でもあります。観た後に、自分を好きになれる映画『インサイド・ヘッド2』。幸せな気持ちになりたい人、ぜひ観て欲しい。自分を好きになりたい人、絶対に観て欲しい」と作品の公式サイトに感想を寄せていたが、それを受けて「風間くんがそう言うなら見たい」「幸せな気持ちになった」とファンが呼応。 Kis-My-Ft2・宮田俊哉が「自分が思春期だった頃も自分の中では、こうやって新しい感情が生まれたりしていたのかな?と思うと懐かしい気持ちにもなり、改めて親孝行をしなくちゃ!と思える作品でした。僕はポーチーが好きです!笑」と同じく公式サイトにコメントを発表すれば、「宮っちの言う通り、親孝行したくなった」「確かにポーチーかわいかったw」と共感したり、ファンが“推し活”の一環として宮田のグッズを持って劇場に足を運んだり。それも“推しの推しは推し”の流れだろう。 ■応援サポーター・INIの存在も大きい さらに、今作の“応援サポーター”を務める11人組グローバルボーイズグループ・INIの存在も大きいのではなかろうか。INIといえば6月にリリースした6thシングル「THE FRAME」が初のミリオン達成で勢いに乗るグループ。高校入学という人生の転機を迎え、巻き起こる感情の嵐に悩む主人公・ライリー同様、オーディションが“人生の転機”であり、オーディション中にヨロコビ、カナシミなどさまざまな感情を乗り越えたことが作品のメッセージである「どんな感情も、あなたの宝物になる」を体現しているということで応援サポーターに選ばれた。特にメンバーの池崎理人は幼い頃からピクサー作品が大好きだったと公言しており、情報解禁時には「いつかピクサーに入って働きたいと思っていたぐらいなので、応援サポーターになれたのはうれしいです。自分の夢だったことに関わらせていただけるので、感動しています」と、コメントしていたガチ勢だ。(※池崎理人の「崎」は「立つ崎」が正式表記) 彼らのファン(=MINI)もそれは当然知っており、「絶対見に行くね」「うちの推しが推しているピクサーの仕事ができているんだから応援しよう!」「またディズニーさんの仕事ができますように」「次の仕事につなげるために何回も見に行く」「応援のつもりで見たら面白かった」といった具合に、“応援サポーター”を応援するためにMINIが劇場に駆け付ける、という現象も。 特にMINIは熱量たっぷりに応援することでも知られており、映画を見に行くだけでなく、SNSなどに本件に関する投稿やコメントをたくさんするなどして盛り上げている。ディズニー・スタジオ公式YouTubeチャンネルで公開されているINIの「感情たちがあふれ出す」特別映像のコメント数は870を超える盛り上がり具合だ。そういうところからもファンの熱さ、推しと一緒に作品を盛り上げたいという思いが伝わる。 それだけなく、本国のキャストや日本版声優を推すファンの存在も忘れてはいけない。ヨロコビ役の小清水亜美、カナシミ役の大竹しのぶ、ムカムカ役の小松由佳、ビビリ役の落合弘治、イカリ役の浦山迅に加え、続編で成長したライリー役の横溝菜帆、新しいキャラクターであるシンパイ役の多部未華子、ハズカシ役のマヂカルラブリー・村上、イイナー役の花澤香菜、ダリィ役の坂本真綾、ライリーの“秘密の推しキャラ”役で中村悠一、武内駿輔、花江夏樹がキャスティングされており、日本版エンドソングはSEKAI NO OWARIが担当。それぞれが多くのファンに支持されるスターであり、そのファンも同様に推し活していることを思えば、やはり“推し活”という要素も大ヒットに貢献していると見て間違いなさそうだ。 劇場での上映期間は限られているので、気になっているけどまだ見られていない人は「推しは推せるうちに推せ」と同様に、暑くてダリィと言わずに見られるうちに見に行くのが賢明だろう。 ◆文=森井夏月