大阪市交通局・南海・泉北高速でICOCA導入 ── 関西の鉄道利便性向上へ(鉄道ライター・伊原薫)
大阪市交通局(以下「大阪市交」)・南海電気鉄道(以下「南海」)・泉北高速鉄道(以下「泉北」)・西日本旅客鉄道(以下「JR西日本」)の鉄道4社は23日、ICカード乗車券を活用した連携サービスの拡大について記者会見を行いました。主な内容は「大阪市交・南海・泉北でのICOCA・ICOCA定期券の販売開始」。これにより、関西の鉄道がより利用しやすくなるようです。
「ICOCA」と「PiTaPa」の垣根を越えた連携
これまで関西では、JR西日本のICカードサービス「ICOCA」と、関西の鉄道事業者で結成する「スルっとKANSAI協議会」が提供するICカードサービス「PiTaPa」の2種類がありました。関東でいうと前者は「Suica」後者は「PASMO」にあたります。 今回の記者会見では、従来はPiTaPaの普及促進に取り組んできた大阪市交・南海・泉北の3社で、新たに自社管内でICOCAの販売を開始することが発表されました。 例えば、大阪市交では全駅に設置されたピンク色の自動券売機で、南海では定期券発売個所や主要駅の自動券売機で、ICOCAが購入できるようになります。同時に、各社ではICOCA定期券の発売も開始。南海・泉北では既にPiTaPaによるIC定期券サービスを行っていますが、今後はICOCA定期券も利用可能になります。 いずれも、サービス開始時期は2017年春を予定しています。
PiTaPaを持たなかった人も駅で購入が可能に
3社のICOCA導入によって、これまで以上に鉄道の利用が便利になります。首都圏や他地域に比べてICカードの普及が遅れていると言われている関西ですが、その原因の1つにPiTaPaサービスが「ポストペイ方式」であることが挙げられます。 ICOCAやSuica・PASMOなど他のICカードサービスは「プリペイド方式」といって、あらかじめ乗車料金をチャージしておき、乗車ごとにカードから引き落としていく方式です。これに対し、ポストペイ方式とは利用料金をまとめて後で支払うサービスで、クレジットカードと同じ考えです。このため、PiTaPaはクレジットカードと組み合わせて発行されることがほとんどで、気軽に駅で買って利用する、ということができませんでした。3社がプリペイド方式のICOCAを販売することで、これまでPiTaPaを利用できなかった人たちもICカードを持てるようになります。 また、磁気定期券を利用している人たちにとっても乗り越し精算等が便利になるため、今後はICOCA定期券が普及していくものと思われます。さらに、4社では各社間の連絡定期券についても、今後はPiTaPa方式に加えてICOCA方式での導入も進めていく予定です。 なお今回のICOCA導入を受けて、スルっとKANSAI協議会では磁気カードや磁気定期券の廃止について検討しているとのこと。関東では既に磁気カード「IOカード」や「パスネット」の販売や改札機での使用などが終了していますが、関西でも近いうちにそういった流れが起こるかもしれません。 新たなステージへ入った関西のICカード乗車券事情。これからは、鉄道がもっと使いやすくなりそうです。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。