日米同盟の役割やその対価も? 「安倍・トランプ」首脳会談の焦点は
安倍晋三首相がトランプ米大統領と初めての首脳会談に臨みます。トランプ大統領が主張する「自動車貿易の不均衡」問題が注目されていますが、安全保障分野ではどんな論点が焦点になりそうでしょうか。元外交官の美根慶樹氏に解説します。 【写真】トランプ大統領の保護主義的な政策、保護主義の何がいけないの?
●異例の厚遇
トランプ大統領は就任直後から、選挙期間中に公約として掲げたことを猛烈な勢いで実行に移していますが、同時に様々な問題も発生しています。そんななか安倍首相とトランプ大統領との会談が2月10日(日本時間11日未明)に行われます。安倍首相はトランプ氏と大統領就任前にも会っていますが、今回は米国の新政権成立後初めての日米首脳会談です。両首脳は政治・経済両面にわたって話し合いを行うでしょうが、安倍首相がトランプ大統領と個人的な信頼関係を築くこと自体、具体的な話し合いに劣らず重要です。トランプ大統領は安倍首相と10日だけでなく11日も会食やゴルフを通じて親交を深める予定だとも伝えられるなど安倍首相を異例の厚遇で迎えようとしています。米国の大統領が2日間にわたってプライベートの邸宅やゴルフ場で日本の首相をもてなしたことはかつてありませんでした。 トランプ大統領は経済問題に関する交渉には自信があるようですが、外交や安全保障の面では経験がなく、思い込みや誤解に基づいた発言をしており、トランプ氏が複雑な国際政治において適切な判断をしていけるか、率直なところ不安があります。 トランプ氏はよく「偉大な米国を復活させる」と言いますが、これはどうやら米国内で貧困や失業など問題が山積していることを言っているのであって、外国から見れば米国は偉大な国です。たとえば、米国が多大の犠牲を払いながら世界各地の平和と安定に寄与していることは明らかです。部分的には過ちがあったかもしれませんが、全体として米国は積極的な役割を果たしています。
●トランプ氏の認識
安倍首相との話し合いはトランプ大統領が世界の現状や、米国の果たしている役割についてこれまでとは少し違った角度から見つめ、認識を深めるきっかけになる可能性があります。 日米の同盟関係も、数字で示される経済・貿易問題と異なり、その意義や効果については抽象的な説明が多くて分かりにくい面がありますが、アジアの平和と安定に重要な役割を果たしています。たとえば日米の同盟関係がなければ日中関係、南北朝鮮と日本との関係はまったく異なる様相になるでしょう。 沖縄の米軍が果たしている役割についてもトランプ氏はどの程度理解しているか大いに疑問です。在日米軍、沖縄の米軍が日本だけのためでなく、米軍による他の地域、例えば中東での行動に不可欠の役割を果たしていることなど、失礼ながら、ほとんど分かっていないのではないかと思わされることがあります。