郵便局長会、情報漏えいに「制裁」 報道への内部告発封じ? 賠償請求や除名処分も
小規模郵便局の局長でつくる任意団体「全国郵便局長会」が、会員の局長に対し、会の活動に関する情報の漏えいを禁じ、違反すれば制裁を科す内部規則を制定したことが、関係者への取材で分かった。局長会を巡っては2021年、内部資料などに基づく西日本新聞の報道によって、政治活動に関する組織ぐるみの不正が発覚しており、組織内の締め付けを図る狙いがあるとみられる。 (宮崎拓朗、小川勝也) 【画像】不祥事根絶のために九州地方郵便局長会が出した内部文書 関係者によると、局長会が昨年11月に制定したのは「情報管理に関する規則」。報道機関の取材には原則として局長会の事務局が対応し、局長が取材に応じた際は報告を求める。会の活動に関して情報漏えいがあった場合、局長会は外部の専門家に委託するなどして調査を実施。漏えいしたりそれを看過したりした局長に対して損害賠償請求し、故意であれば除名処分の対象にすると規定している。 規則の制定が提案された同月の局長会の臨時総会で、末武晃会長は「このような規定を作ることに少々抵抗感がある」と述べつつ「情報を外部に漏えいすることは、活動に重大な支障をもたらす」と説き、満場一致で承認されたという。 本紙は21年秋、関係者の証言や内部資料に基づき、局長会が、日本郵便の会社経費で購入されたカレンダーを参院選の組織内候補を支援する活動に流用していた疑惑を報道。同社は、計約8億円の経費で購入したカレンダーについて、政治活動の支援者に配布するよう局長会が指示したと認定し、会の幹部だった局長90人を懲戒処分にした。 局長会はこれまで、幹部らが不正を指示した経緯や責任の所在について説明していない。一方、今年4月、本年度の活動方針案を全会員に示した文書には「ここ数年、会員によるマスコミへの情報漏えいなどにより、(郵便局ネットワークに対する)信用、信頼が揺らいだ」と記載している。 九州のある郵便局長は「幹部の指示で不正が起きたのに、それを改めようと行動した局長が悪者にされているようで納得できない」と話す。 今回の規則制定に関し、局長会は本紙の取材に応じなかった。日本郵便は「社外の任意団体である局長会が実施している施策なので、内容は把握していないし、関与するつもりはない」とコメントした。