大麻が若者の間で蔓延、福岡県がSNSで直接相談呼びかける「プッシュ型」窓口設置…匿名可能で秘密厳守
若者の間で大麻が蔓延し、摘発される事例も急増している。12月には大麻取締法の改正に伴う「使用罪」の創設を控え、福岡県はSNSを通じて若者に直接、相談を呼びかける「プッシュ型」の窓口を設けた。全国的にも珍しい取り組みで、専門家は「これまで支援が行き届かなかった層にもアプローチできる能動的な取り組みだ」と評価する。(山本光慶) 【グラフ】大麻を巡って摘発される若者が増えている
摘発が過去最多475人
「海外では合法の国もあり、危険とは思っていなかった。精神的に依存していたと思う」。福岡市の大学在学中に大麻を所持したとして逮捕、起訴された男性は今年1月、福岡地裁の法廷でこう語った。高校時代にクラブで知り合った人物に勧められて始めたのだといい、有罪判決を受けた。
福岡市では5、6月にも高校生2人が紙巻きの大麻などを所持したとして、同法違反容疑で相次いで逮捕されている。背景には、大麻をはじめとする違法薬物に対する若者の抵抗感が薄れ、入手も容易になっていることがある。九州厚生局麻薬取締部は今月18日、大麻に似た成分を含む植物片を市内の店舗で販売していた男2人を摘発した。植物片はたばこ状に加工され、1本約3000円で売られていたという。
福岡県によると、昨年、大麻の所持容疑などで摘発されたのは過去最多の475人で、8割を30歳未満の若者が占めていた。
大麻は「ゲートウェー・ドラッグ」とも呼ばれ、危険性がより強い覚醒剤といった薬物乱用の「入り口」となる恐れが指摘されている。自身もかつて大麻を使用した経験を公表し、今は依存者の支援に取り組む「木津川ダルク」(京都府)の加藤武士代表(59)は「大麻から違法薬物のコミュニティーに加わり、ほかの薬物にも手を出すようになった」と振り返る。その上で、「脳が発達過程にある若者は大麻に依存しやすく、ダルクが支援する事例も増えている」と話す。
「使用罪」で相談ためらいに危機感
国の調査では、中高生の0・3%に大麻の使用経験があるという。福岡県の約27万人に当てはめると、約800人に上る計算だ。一方、これまでに県内の行政窓口に若者から相談が寄せられたことはほとんどなかったという。使用罪の施行により、違法性を認識してさらに相談をためらう「潜在化」も懸念される。危機感を強めた県が10月に新設したのが、「手を伸ばす」の意味を持つ「アウトリーチ型」の相談窓口だ。