修験道の開祖「役行者」が愛した箕面山へ─行基や空海が憧れたという山岳信仰の修行の場─
修験道(しゅげんどう)と聞けば、滝に打たれる「滝行(たきぎょう)」をイメージされる方は多いだろう。大阪から1時間圏内で足を運べる箕面市の名所「箕面大滝」も、歴史上有名な修験道の聖地である。 今から約1300年以上前の西暦658年、この滝で修行した役行者(えんのぎょうじゃ)は、滝つぼのかたわらに弁財天祭祠を建立。これが現在、滝道の中心部にある箕面山瀧安寺(りゅうあんじ)の前身だ。その後、役行者は全国各地の霊山・霊地を訪ね歩き、人々を教化してまわったが、最晩年は箕面に戻り、箕面山の天上ヶ岳(標高499m)にて68歳で入寂(にゅうじゃく)したと伝わる。 その山頂には「役行者が昇天した地」を示す石碑や銅像などが立っている。さて、全国を歴訪した役行者は、なぜ箕面山を修行と昇天の地に選んだのか。役行者を創建者とする瀧安寺を訪ね、山本住職にお話を伺った。 「箕面山を修行地としたのは、人里から3㎞程度と比較的近い距離にあり、滝の落差が約33mと修行に最適であったからと考えられます。天上ヶ岳は幼少期を過ごした奈良地域、金剛葛城連山などを眺望でき、生涯を巡らせる地だったのではないか」 この寺では年に3回、全国から役行者の後継者を思わせる山伏(やまぶし)が集い大行列をなす。高く炎を上げる大護摩(おおごま)法要は圧巻。山伏問答も見応え充分。 また滝道の入口に位置し、里人の守護神を祀る聖天宮西江寺(さいこうじ)は役行者が老翁(ろうおう/大聖歓喜天の化身)と対談した伝説をもつ。「役行者が修行に入る際、地元箕面の有力者に支援を頼んだと考えられます。ここは大滝へ向かう山道の正規の入口で、そうした会談をする窓口のような場であったとみられます」と西江寺・小倉叡裕住職がいう。境内に残る「対談石」は何の変哲もない石のようだが、どこかミステリアスな風格がある。 阪急箕面駅から箕面大滝まで片道40分の道のりは自然一杯。なだらかな遊歩道があり歩きやすい。大滝の水飛沫や森林浴のマイナスイオンに気持ちが落ち着き、心地よい疲労感に包まれる。半ば伝説の存在の役行者という人が、ぐんと身近に感じられる聖地箕面を旅してみては。 写真提供/箕面山瀧安寺、箕面市観光協会、上永哲矢