大谷フィーバーの裏で加速する「野球離れ」…怒らず褒めろ?少年少女に厳しい指導どこまで必要? 業界全体で「稼ぐ力」どう育てる?
笹川スポーツ財団の調べによると、スポーツ活動している子の母親は、指導者や保護者の送迎をする(66.7%)、練習や大会等で指導者・保護者の食事や飲み物を用意する(64.4%)、大会用面でも、道具代が約7万円、ユニフォーム代が約2万円、活動費が約3万5000円で計12万5000円が必要となる。 加えて、野球離れの要因として「時間的拘束が大きい」ことがある。広尾氏は「グラウンドは近所にあるとは限らず、車の送迎が出てくる。『お茶当番』は消えつつあるが、遠征には父母が送る必要がある。最近では中学生からプロテインを飲んでいて、その費用もバカにならない」とした。
■野球少女が増加中?NPBガールズトーナメントの狙いは
野球離れが進む一方で、注目されているのが「野球少女」の増加だ。2013年に発足したNPBガールズトーナメントは、少年野球で出場機会がない女子学童のために立ち上げられた。チーム数は2013年の30から、2023年には46に増加。日本女子野球界のレベルアップが競技者人口の増大につながると期待されている。 山本氏は「地元の愛知県でも、女子が増えている。感覚として相当増えていて、NPB(日本野球機構)がトーナメントを始めた狙いは当たっている」と指摘する。 広尾氏によると、「ソフトボールをやっている女子の多くが、潜在的に野球をやりたい。イチローや大谷翔平が好きで、少年野球に入っても、年を重ねるごとに段々とできなくなる。ソフトボールが“野球の代替品”のような感覚の女性は結構いる。ソフトボールの女子人口が減っていて、野球が食っている状態だ」。
■業界全体の“稼ぐ力”上げるには
元デジタル副大臣の小林史明衆院議員は、「野球界は自分たちの首を縛っている」との見解を示す。「甲子園はいいコンテンツなのに、潔癖すぎて“体育”から抜け出せていない。アメリカの大学バスケットボールのように、スポンサーや放映権で稼げないのか。稼いだお金で、練習環境を整えるなど、経済を回した方がいい」。 この指摘に広尾氏は「高校野球はクラウドファンディングをやってもダメだった。お金もうけする仕組みがない。高校野球連盟にも問題意識を持つ人はいるが、上層部に“お年寄り”が多く理解されない。いまなお連絡を取るのはFAXで、メールをしていない所も多く、絶望的に感じる」という。