山中慎介が3・1両国で薬物疑惑ネリと再戦。「最後。この1戦に賭ける」
修正点はやはりディフェンス面だ。 帝拳の浜田剛史・代表も「ネリは全勝で勢いと強さを感じる。だが、あの試合は、心残りだった。(タオル投入の)あの後を見せたかったのが本音。ただ攻め込まれたときに、お客さんや外からは打たれたように見えた。見ている人が安心できるようなディフェンス力を磨くこと」を課題を挙げた。 前回の試合では、右のリードが多く出たが、序盤にステップバックで“神の左”を外され不発に封じ込まれた。逆に強引な突進から大きなパンチを振り回されて“被弾”が目立った。山中と同じくサウスポーのネリに対して正面に立ち“受け”に回ってしまったことが敗因だった。 「作戦的なことを詳しくは言えないが、動きが止まってしまったことがよくなかった。おそらくネリは1ラウンドから出てくると思う。そこにチャンスがある。最近の試合では、攻めているときにパンチをもらってダウンしている。そこに隙があると思う。シンプルに考えて戦いたい」 ネリはWBCから山中との再戦を指令されていたため、ノンタイトル戦として昨年11月4日にメキシコで同級8位のアーサー・ビジャヌエバ(フィリピン)と対戦、6回KTOで全勝レコードを「25」に伸ばしている。 だが、4回にカウンターを食らってダウンするなど、この試合で弱点もあらわにした。決して山中に雪辱の余地がないようなパーフェクトなボクサーではない。ネリの荒い攻撃に“神の左”でカウンターを狙って対抗すれば逆転シーンは必ず起きる。リスクのある危険なボクシングだが攻撃は最大の防御なのである。 実は、山中は、もし昨年8月の13度目の防衛戦に成功して具志堅用高氏の日本記録に並んでいれば、ベルトを持ったまま“伝説のボクサー”として引退する気持ちを固めていたという。 この再戦が勝っても負けてもラストマッチになるのか? 「今は、この試合の先のことは考えられない。最後というか、この1戦に賭けている。ネリに勝つことしか考えられない」 山中は覚悟を胸に秘めた。 プロ12年目。27勝(19KO)1敗2分の成績を誇る“不世出のハードパンチャー”は、そのボクシング人生のすべてをかけてリングに上がる。 2018年1月2日。帝拳ジムでの“練習始め”の日に山中は、妻と2人の子供達にプロになって初めて練習を見学させたという。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)