【福粕花】全国区のブランドに(1月6日)
本県に新たなブランド牛肉「福粕花[ふくはっか]」が誕生し、県内のスーパーや飲食店で販売が始まっている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で打撃を受けた畜産業の振興に向け、品質の高さをアピールするなどして生産者と販売店を増やし、消費拡大につなげていきたい。 県産牛肉の価格は震災と原発事故発生前、全国平均より4%ほど低かった。事故直後は、風評で格差が29・4%に広がった。その後は改善傾向を示しているが、依然として10%ほど下回っている。経営環境は資材や燃料費の高騰で厳しさを増し、畜産農家の離農も相次ぐ。こうした中、ブランド牛は新たな収益源として期待されている。 県、JA全農福島、福島大、畜産農家が連携して品質と風味の高い肉質開発を2021(令和3)年度から進めてきた。県内の酒蔵でつくられた酒かすを粉末状に加工して1日当たり約100グラムを餌に加え、出荷前の90日間与える。福島大の研究によると、うまみ成分のイノシン酸が増すことで甘みが強く、ジューシーな味わいになるという。JA全農福島が扱う和牛のうち、肉質等級が最高級の5級となった福島牛の牛肉だけが福粕花と名付けられる。
今年度は畜産農家6軒が237頭に酒かすを与えた結果、約6割の140頭が5等級になる見込みだ。ただ、生産数が少ない上、販売先は一部のスーパーや農産物直売店、焼き肉店、旅館など10カ所程度にとどまる。販売期間もフェアなどに限られているのが現状だ。 県は、出荷を2028年度までに300頭に倍増させる目標を掲げている。酒かすの与え方など福粕花の生産方法の仕様を今年度内にまとめ、農家に周知する方針だが、研修の場などを設けて福粕花の魅力を直接伝え、生産者を増やす努力も必要だろう。県民が購入しやすいよう、取り扱う店舗や飲食店を県とJA、経済団体が連携して開拓する取り組みも重要だ。 数多くのブランド牛が全国にひしめいている。県外に売り込むには、牛肉に合う県産酒、県内各地で醸造された特色のある県産ワイン、県オリジナル高級米「福、笑い」などと組み合わせ、相乗効果で付加価値を高める工夫も欠かせない。(渡部純)