「ごみがごみを呼ぶ」秋葉原…ルール分からずポイ捨てする外国人も 対策は
電気街や「アニメの街」として若者や外国人観光客に人気のある東京・秋葉原の街で、地元の人たちが「ごみのポイ捨て」に悩まされています。東京都によりますと、秋葉原を訪れる外国人観光客の数は都内で5番目に多く、外国人を含めた多くの人が街に来るため、「ポイ捨て」も増えているようです。行政と地域が協力し、試行錯誤する現状を取材しました。 今年3月、インターネットの投稿が話題となりました。『秋葉原はゴミ箱じゃないんだよ!』──。そこには、歩道に広がる大量のごみが写っていました。 実際に多くの人が行き交う秋葉原の街に行ってみると「ポイ捨て禁止」と書いてあるにもかかわらず、歩道には多くのごみが捨てられていました。自動販売機の周りには大量のペットボトルがあふれ、排水口はたばこの吸い殻で埋め尽くされていました。 この現状について、秋葉原で70年以上暮らしてきたという神田松富町会の田中喜一町会長は、コロナ禍が明けて増えている外国人観光客が一因だと指摘します。田中さんは「住んでいる人にしてみれば本当に迷惑。これだけ外国人も多くなると、いろいろ書いてあってもルールを守らない。街が変わっちゃったから。本当に困ったもんだと思う」と話します。また、長年にわたって街づくりに携わってきた秋葉原タウンマネジメントの加茂義哉専務は、街にごみ箱が少ないため、ルールが分からない外国人観光客がポイ捨てされている場所を見て自分も捨てていい所だと誤って認識してしまうのではないかと話します。加茂さんは「ごみがたまり出すと、ごみをポイポイ投げ捨てる形で放置ごみの周辺にどんどんごみが散乱していく。ごみがごみを呼ぶというサイクルになっている」と指摘します。 秋葉原を訪れる外国人観光客からは「ごみを捨てる場所は非常に限られている。もっとごみ箱は増やすべき」(オーストラリアからの観光客)、「ほとんどの国ではごみを持ち帰ることはないですから」(ドイツからの観光客)といった声も聞かれました。 事態を改善しようと、加茂さんは過去に一度、歩行者天国にごみ箱を設置したといいます。しかし「飲み残しも食べ残しもそのまま入れられて、ごみ箱の周辺が非常に汚れて衛生上よくないということが起こった。係員が『燃えるごみと燃えないごみを分けてください』と言っても、まず日本語が通じない。また、国によっては分別する文化がないため、なぜ捨てていけないのかと、中には詰め寄る人もいた」(加茂さん)といいます。 ごみ箱を置くだけでは解決しないこの問題に対し、千代田区は地域の企業と協力しさまざまな取り組みを進めています。日曜日に行われる歩行者天国では、エリア内に大きなごみ箱を設置するとともに係員を配置し、分別の仕方が分からない外国人観光客に捨て方を教えるほか、多言語で作られたルールマップなどを配布してポイ捨て防止を呼びかけています。また、平日も含め、ボランティアによる清掃活動も定期的に行っています。 さらに、区の清掃職員が本来の回収時間よりも前に道路を見て回り、分別されていないものやポイ捨てされているものを回収する取り組みも進めています。この日もわずか20分ほどの見回りで、大量のごみが回収されていました。担当者は「千代田区は地域住民・警察と合わせて、歩行者天国開催時にごみのない環境をつくろうと取り組んでいる。ごみの不法投棄防止・犯罪の起きにくい街づくりに取り組み、千代田区の安心安全に取り組んでいく」としています。 <外国人だけじゃない 課題は他にも…> 対策に苦慮する「秋葉原のごみ問題」の原因は、外国人観光客によるものだけではありません。 1つは「飲食店による投棄」です。千代田区によるごみ回収は一般家庭が対象で、飲食店など事業者のごみは民間のごみ回収業者に依頼する必要があります。しかし一部の飲食店の中には、指定時間外に路上にごみを出しているようです。そこで区は対応策として、ごみ袋を開けて中身を確認し、例えばごみの中に含まれている領収書などから住所を割り出し、直接店舗に正しくごみを出すよう、指導や要請をしているということです。 さらに、ポイ捨て対策が進まない原因は他にもあります。それは「条例化の難しさ」です。千代田区は歩道沿いに花壇を設置するなど“ポイ捨てしにくい環境づくり”をしたいとしていますが、歩行者天国を実施している中央通りなどは東京都が管理する都道です。このため、区の判断で花を植えたりルールを条例化したりするような臨機応変な対応ができないのが現状です。道路を管理する行政の違いがあるため、東京都との連携が望まれます。 秋葉原タウンマネジメントの加茂さんは「ボランティアの皆さんを含めて美化に協力いただいている。既にやるべきことはやっている。あと必要なのは、一人一人の思いやりだと思う」と話しています。“ごみがごみを呼ぶ”現状から、一人一人がごみをポイ捨てせずに“美化が美化を呼ぶ”心がけと取り組みが大切だといえそうです。