“逃げ出したいほど苦しい”制作の先にあるもの。『海に眠るダイヤモンド』音楽・佐藤直紀氏の心の内
本作での音楽の使われ方は「驚きばかりで面白い」と語る佐藤氏。 「『この曲はあのシーンに当たるだろうな』と想定しながら書いているのですが、本編では全く違う使われ方をしていて。でも、これがドラマ音楽の面白さでもある。映画音楽の場合は事前の相談から変わることはほとんどありませんが、ドラマは選曲担当の使い方次第で作品がガラッと変わる。僕とは別の発想がそこに乗っかるので、新たな発見があるんです。今回は僕の音楽演出表現の幅をさらに広げてくれるような感覚があり、とても勉強になっています」 と、選曲担当との化学反応について語る。 佐藤氏は本作の選曲担当・遠藤浩二氏のことは以前から知っていたそう。 「作曲家としての遠藤浩二さんはもちろん存じていましたが、選曲家としても活動されていることを今回初めて知り驚きました。作曲家に選曲をしてもらうということは、監督が別の監督兼編集の人に編集を任せるようなもの。そういったことは初めてだったのでどうなるのかな…と思って」 と当時の心境を吐露。 「でも、完成映像を見て、遠藤さんが作曲家の立場になって曲を当ててくださっていることがわかりました。おそらく作曲家同士にしか伝わらないかもしれませんが、構成と編集が気持ち良かった。すごくうれしかったです」 と、遠藤氏への信頼を語った。 ■制作中は逃げ出したいほど苦しい…それでも踏ん張って生み出すのは「今一番かっこいいと思うもの」 「ここ数年は視聴者がどう捉えるかというのは敢えて気にしないようにしています」と口にした佐藤氏。 「昨今、ドラマや音楽に限らず、エンターテイメントの受け止め方がこれまでと変わってきているように感じます。さまざまなコンテンツを気軽に視聴する機会が圧倒的に増え、見る側のレベルは非常に高い。だからこそ、こちらが『こういうのが好きでしょ?喜んでくれるんでしょ?』みたいに顔色を伺うような、魂のこもっていない曲を書こうものなら簡単に見透かされてしまうし心に響かない。自分が信じる最良の音楽を勇気を持って書き、視聴者の皆さんに『これが僕が思う今一番格好良い音楽なんだよ』と提案する。そういったエンタメの作り方が伝わるようになったと思います」