寺社の入場料に値上げの余地?財務省が示唆した理由
財務省が、財政制度等審議会に提出した資料で、寺社の入場料の値上げの余地を示唆したとして話題を呼んでいる。文化庁の文化財予算に関して、日本の寺社の入場料の安さと海外の宮殿などの入場料の高さを比較する表を掲載したためだ。その意図は何だったのか、財務省に取材した。
日本の寺社は安い?観光地の入場料を表で国際比較
話題となったのは、財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会の財政制度分科会で7日に提出された資料。文化庁の文化財関連予算について審議する内容の中で、文化財の「保護」だけではなく、今後は文化財を観光資源として積極的に活用することが必要だと指摘。そのためには文化財の「所有者自身の取組みを積極的に促すという視点が必要」という記述の後に、文化財の入場料を国際比較する表が挿入されていた。 表に書かれていたのは、清水寺の入場料が400円、厳島神社の入場料が300円に対して、ロンドン塔が4625円、ウエストミンスター寺院が3700円など。日本と海外の入場料の差を際立たせる内容だったことから、一部で「財務省が寺社の入場料値上げを求めている」との憶測や批判を呼んだ。 資料の意図について財務省主計局の担当者は「寺社などに入場料を上げてほしいという立場にない上、入場料を上げてくれと言っているわけではない。(まして一部で言われているような)入場料を上げて税収を上げようという意図とは全く異なる」と説明する。その一方で財務省は、文化財を「保護」にとどまらず観光資源に活用する際に、観光客向けの整備費用を、寺社が自己負担していく必要があるという考えを示している。
文化財の「保護」は国、「観光資源活用」は寺社が自己負担?
2016年度の文化庁の文化財予算は、総額460億円のうち70%の320億円が「文化財の修理等」に充てられている。財務省は、限られた国の予算は文化財の修復・保護に充て、例えば外国人観光客向けの案内板の設置など、文化財を観光資源として活用するための費用については「文化財所有者の収入増に直接結びつく」として、寺社自身が負担していく必要を指摘している。