結局「ナノイー」とは…? デバイス1億台を突破した今、パナソニック彦根工場で聞いてきた
ナノイーデバイスは、ナノイー発生に必要な水分を空気中から結露現象を利用して収集するため、薬剤や液体などの補充が不要。高電圧をかける際、電極が水に覆われていることから放電時に電極が摩耗しないため、電極を交換せずにナノイーを発生し続けられるのがメリットだといいます。
空質系は「OHラジカルの量」、美容系は「水分量」が重要
なお、ナノイーデバイスは空気清浄機などの空質に特化したものと、ヘアドライヤーなどの美容に特化したものの2ラインがあります。 空質向けは、有害物質を抑制する「OHラジカルの量」が重要な要素。OHラジカルを増加させるためには放電領域(霧化電極)の先端の発光領域を拡大させる必要があります。 「これまでコロナ放電からマルチリーダ放電と、放電のパターンを進化させてきました。放電状態と発生成分の関係の追求や電圧印加制御の進化、発光部の工夫などの研究開発の末、これまで『線』であった発光領域を円錐上の『面』に広げることに成功し、2021年には『ラウンドリーダ放電技術』を確立しました。これによってOHラジカルの量をこの10年間で100倍に増加させ、1秒間に48兆個のOHラジカルを発生するナノイーの量産にこぎつけました」(佐々木氏) 一方、美容向けの場合、髪に潤いを与えるためにはナノイーに含まれる「水分量」を増やす必要があります。 「2019年には、マルチリーダ放電技術によって水分量を従来の18倍に増加させました。この秋に発売される(※現在は発売済)新しいドライヤー『nanocare ULTIMATE (ナノケア アルティメイト)』では、霧化電極形状と電圧印加制御技術をさらに進化させて水分量を180倍に増加させたナノイーデバイスを搭載しています」(佐々木氏) ナノイーの進化に伴ってニオイや菌、ウイルスなどに対する効果が拡大したことから、世界11か国45機関の第三者機関との共同研究によって192件のエビデンス(効果実証)を取得しているとのことです。 「研究分野での開発加速を目指すため、2024年3月に日本最大級の検証空間を新たに導入しました。本設備の導入で、国内では非常に検証が難しかったバイオハザードレベルの高いウイルスや微生物に対する大空間での試験が可能になりました。今後も検証を積み重ね、ナノイーの性能向上と新たな価値創造を進めていきたいと思います」(佐々木氏)