EVシフト一服の中、日産の最新EVに試乗 エンジン好きが感じたEVの魅力と難しさ
補助金頼りのモビリティの価値
もう一つの懸念が価格差だ。EVはバッテリーが高額なため、試乗したアリアはオプション装備を含めて800万円弱。サクラでも300万円を超える。今のところEVには手厚い購入補助金があり、実際はもう少し安価に購入できるが、自治体によって金額は異なる。年度ごとに定めた予算がなくなれば打ち切りとなる。また、今後も恒久的に続く保証はない。 日産のラインアップでは、SUV「エクストレイル」がモーター駆動のハイブリッドシステム「eパワー」を搭載した最上級グレードで500万円台。また、足元ではEVの販売台数が世界的に伸び悩み、中国では熾烈な値下げ合戦が繰り広げられている。トレンドや景気動向にユーザーは正直だ。 筆者はもともとエンジン車好きだ。一方、企業のサステイナビリティ活動を記事にしている仕事柄、自らの移動やライフスタイルでどれくらいのCO2が排出されているのか、つい意識してしまう。2台のEV試乗の合間に「純内燃機関車」である「スカイライン」にも乗った。エンジン始動の音や振動にいつもの安心感やワクワクを覚えたのと同時に、試乗で無駄に大気を汚染してしまったことに自責の念を抱いた。 中長期的には、世界的にEVの比率が上がるのは確実だと言われる。独ロバート・ボッシュは今年4月時点で、欧州では2030年に新車の7割以上がEVになるとみる。ただ、各国の政策動向などさまざまな不確実要素があり、普及への確固たるシナリオはないのが実情だ。 脱炭素化に向けて官民が取り組む中、現時点のEVは「変化」の最中にあるだろう。その価値に現時点で白黒をつけるのは時期尚早で、賛否両論あってしかるべきだと改めて感じた。 (中村 俊甫)