吃音で将来を悲観、女子高生だった奥村安莉沙さんに勇気を与えた一冊は…「逃げちゃだめだ」
私も吃音から逃げちゃだめだ――。この小説を読んで、そんな気持ちになりました。そして、大学進学をきっかけに、自分から吃音をカミングアウトして、もう隠すのはやめようと決心しました。入学式の前夜は緊張で寝られなかったけど、自己紹介の中で『実は吃音なんです』と明かしました。笑われるかなと不安でしたが、『何か困ったことがあったら言ってね』と好意的な反応が返ってきて、ホッとしました」
なんとか吃音である自分を受け入れることはできたものの、苦しみが消えたわけではなかった。
「大学時代のある日、小学生の頃に20歳の自分に向けて書いた手紙を実家の机の引き出しから見つけたんです。『カフェで楽しく働いていますか?』。昔の夢を思い出しました。でも、吃音のことを考えると、楽しく接客をしている自分の姿なんて想像できません。夢と現実の大きなギャップを突きつけられたようで、本当につらい気持ちになりました。
就職活動中は、緊張すると症状がひどくなり、面接で名前がなかなか言えないこともありました。200社以上に落ち続け、何とか1社から内定を得ることができました。こうして一度は就職したのですが、私はその後の人生を大きく変えることになる決断をします。交際していたオーストラリア人の男性が帰国するのに合わせて、オーストラリアに語学留学することにしたのです」