とんでもなく美味しい湯麵(タンメン)を見つけた!
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
西荻窪に住んで30年が過ぎた。東京の下町で生まれ育った者が、中央線沿線で、下町と同じ空気が漂う町として選んだのが「西荻窪」だった。当時は、古道具、骨董の町として知られていたが、食堂、喫茶店も居心地のよい店が多かった。 その1軒が「博華(はっか)」で、看板には「北京料理 湯麵餃子」と書かれていて、住み始めた当初から、家から近いこともあって、よく通い詰めてきた。その「博華」が道路拡張のため、この5月いっぱいで移転せざるを得なくなってしまった。
今でいう「町中華」だが、私がこの店で好んで注文して食べるのが「たんめん」である。出来上がるまで餃子とビールでつないだ後、運ばれてきた丼には、野菜は、キャベツ、もやし、にんじん、にら、それに豚肉の細切りが入っている。野菜のうま味を生かした麺だが、ポイントはごま油。このごま油の香りが食欲を掻き立ててくれ、寒い時など、何よりのご馳走だった。この店、クーラーがなく、暑い時は窓を開け放つなかで、汗をかきながらいただく「たんめん」も格別の味だった。 同じ西荻窪に「はつね」があって、こちらは現在ラーメンより「タンメン」が人気である。もやしを中心とした野菜を炒め、澄んだ塩味のスープと細い麺がことのほかよくあう。
我が町の2軒で「タンメン」を食べたところで、東京の「タンメン」が気になりだした。例えば「日高屋」のタンメンは、野菜たっぷりで、野菜不足になりがちなサラリーマンに人気がありそうな味つけである。
タンメン専門のチェーン店「タンメン トナリ」も、野菜の盛りがよく、同じような感想を持った。
昔からある「直久」では、名前こそ「とんさいらーめん塩」だが、中身は「たんめん」とほぼ変わらず、これまた山盛りの野菜そばと言ったところ。