【全盛期、再び!】世界を熱狂させたル・マン24時間レース「第四章 世界中のメーカーが再びル・マンへ!形が色々違うから面白い(現在)」 | ル・マン24時間レース2024 開幕直前特集!
2018年にFIA WECの中心にいるACO(フランス西部自動車クラブ)は最高峰クラスとして「ハイパーカー」を提案。ハイパーカーとはメーカーが台数限定で生産する究極のロードカーのジャンルを指す言葉です。性能調整をしますから、メーカーのアイデンティティを象徴するフラッグシップマシンで出てくださいね!という提案だったのですが、当初参戦を表明していたアストンマーティン・ヴァルキリーはF1参戦の計画が浮上したため参戦せず、トヨタだけがGR010で参戦し、またもライバル不在の状況になってしまいました。
そこで目を向けたのが、北米IMSA(ウェザーテックスポーツカー選手権)の最高峰クラスとの統一です。IMSAに参戦する「LMDh」規定のマシンで「ハイパーカー」クラスに参戦できるようにしました。北米は自動車メーカーにとって重要な巨大マーケットですし、レース参戦の予算を取りやすいのです。デイトナ24時間などアメリカのレースだけでなく、ル・マン24時間にも出られる。これは自動車メーカーにとって大きなメリットでした。
しかも、「LMDh」規定ではベースとなるシャシーコンストラクターが決まっており、低コストでマシンを製作できます。性能調整が行われるので過当な開発競争に巻き込まれることもありません。今年のル・マンには「LMDh」規定のマシンでポルシェ、キャデラック、BMW、ランボルギーニ、アルピーヌが参戦。そして、メーカーのPRしたい技術を活かした自由なマシン作りが可能な「LMH(ル・マン・ハイパーカー)」規定でトヨタ、フェラーリ、プジョー、イソッタ・フラスキーニが参戦します。ロードカーとして市販されるハイパーカーをベースにする、という当初のコンセプトは北米IMSAとの共通化によってどこかへ消え去ってしまいました。
それより何より、レースに多数のメーカーが参戦し、同じマシンがプライベートチームにも供給され、盛り上がることが一番です。今はハイパーカーという名前だけが残り、実質はプロトタイプカーによる最高峰クラスになったというわけです。自由なクルマづくりという点では90年代後半の過激GTカー時代、80年代のグループCカー時代と共通するものがあります。しかし、性能調整のおかげでレースのトレンドに捉われる必要がありませんから、それぞれのマシンデザインに個性があるのが今の「ハイパーカー」クラスの最大の特徴と言えます。
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