大洗、AIで火災検知 高所カメラ搭載 消防初動迅速に 茨城
茨城県大洗町は、地上17メートルの高所に設置したカメラの映像を人工知能(AI)が分析し、火災を自動で検知するシステムを導入した。発見が遅れがちな空き家や夜間の火災を素早く把握し、迅速な消火活動に役立てる狙いがある。システムを手がけるアースアイズ(東京都)によると、消防本部でのAIを導入した同様のシステム運用は全国で初めて。14日、町内でシステムの運用開始記念式典を開いた。 「火の見櫓(やぐら)AI」と名付けられたカメラは、町消防本部(同町磯浜町)の訓練棟最上部に設置。半径800メートルを360度見渡し、市街地を24時間体制で撮影する。AIが火災の煙を検知すると、同本部の通信司令室にあるモニターに火元の映像が表示され、消防署員に異常を知らせる。 同システムは、すでに商業施設などで防犯といった広い目的で活用されている。同町では1月の本格運用に向け、AIに炎や煙の画像を学ばせて火災検知の精度をさらに高める。システムは1500万円で導入し、半額を国の交付金で賄う。運用費は年間約120万円。 二階堂均町消防次長は式典で、夜間や空き家の火災による延焼が近年多いことに触れ、「火災を早期に見つけ、消防車を迅速に出動させることができる」と期待した。国井豊町長は「消防活動がスピードアップし、町民の安心醸成につながる」とし、防犯や高齢者の見守りなどでも活用したい考えを示した。 式典後、AIが火災を認知する様子が出席者らに披露された。本部の敷地内で人工的に起こされた煙を、それまで市街地を広く見渡していた自動のカメラがキャッチ。本部通信司令室のモニターには煙の映像がズームアップされ、アラートが表示された。消防署員が映像から発生場所を確認。訓練として、いばらき消防指令センター(同県水戸市内原町)に「火災発生」を知らせ、一連の流れを確かめた。
茨城新聞社