演じ伝える人形と戦争 福島市の荒井小児童が創作劇 26日 150周年式典で披露
太平洋戦争と地域の関わりを学び、伝えたい―。福島市の荒井小の児童は地元の劇団と共に、校内に残る「青い目の人形」を題材とした創作劇に挑んでいる。人形は戦前に米国から贈られ、教員らの手で廃棄を免れた。児童が当時の人々に扮(ふん)し、親善の証が憎悪の的となる理不尽さや平和の尊さを描く。26日の創立150周年記念式典などで上演する。戦後79年。記憶の継承が年々難しくなる中、「戦争の影響は身近な地域にも及んだと知ってほしい」と稽古に励む。 劇のタイトルは「友情人形」。母校の荒井村国民学校(現荒井小)に太平洋戦争前、赴任した新人女性教師が主人公だ。人形「メリー」と遊んだ幼い頃の思い出を大切にしているが、1941(昭和16)年の開戦を機に人形は「敵」とみなされる。作中では、校長に処分を指示された教師の葛藤、人形を守り抜いた地域の人々の思いが描かれる。 「もういいかい」「まーだだよ」。1日、荒井小に近い市西学習センターに児童の元気な声が響いた。出演する4~6年生7人が共演する同市の劇団「120○EN(ひゃくにじゅうえん)」の指導で、せりふや身ぶりを確かめた。毎週日曜に合同稽古を重ね、発声や表情を磨いている。
主人公の小学校時代の同級生役で出る6年の加藤利美さん(12)は歴史に興味があり、参加した。メリーの話は全校集会で聞いたことがあるが、詳しくは知らなかった。「大勢の人の手で守られた人形ということを知ってもらい、平和が当たり前ではないことを伝えたい」と意気込む。加藤さんの姉で、主人公を演じる団員の加藤亜美(19)さんは「地域の歩みを次世代に受け継ぐ大切さを感じてほしい」と話した。 作品は創立150周年に際し、PTAが学校の歩みを象徴するエピソードとして「メリー」に着目し、劇団に依頼して完成した。脚本を担当した120○EN代表の清野和也さん(34)は1990(平成2)年に当時の3年生が残した「青い目の人形」の研究記録などの史料を基に物語を構築した。 終戦から79年が過ぎ、戦争体験者が減り続ける一方で、世界では戦乱が絶えない。清野さんはこうした世相だからこそ、平和と友情を象徴する青い目の人形を伝える意義があると強調する。「劇が身近な地域に戦争の影響が及んだ事実を子どもたちに伝え、平和の貴重さや戦争を防ぐ意識を持ってもらうきっかけになればいい」と願っている。