「大人の不機嫌は子どもを“無理やり”いい子にさせてる」無意識に“子を傷つける親”になっている危険性
子育てには悩みはつきもの。あなたの言動で、無意識に子どもの心を傷付けているかも......?! 「子どもが安心感・自己肯定感を持つためには」「子どものこころを守るために知っておきたいこと」など、子どもと接する際に気を付けたいポイントを、児童精神科の病棟看護師・こど看さんの著書『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』よりご紹介します。思春期までの子を持つ親や子どもとかかわる仕事に就く人は必見! 突然の不機嫌で周囲を困らせる「不機嫌ハラスメント」=『フキハラ』を知っていますか?【漫画で読む】
大人の不機嫌は子どもをいい子にさせる
大人の機嫌は子どもをいい子にさせます。これは、私が児童精神科病棟での臨床経験を10年経た上で実感していることです。 みなさんに注目してもらいたいのは、いい子に「させる」という部分です。つまり、「大人が不機嫌になると子どもは自然といい子になる」ということではなく、「大人が不機嫌になると子どもはいい子にならざるを得ない」ということを私は言いたいのです。 例えば、子どもが不機嫌な様子で床にものを投げつけた場面を見たとき、みなさんだったらどのように考えるでしょうか? きっと不機嫌になっている理由を考えるは ずです。「友達とケンカしたのかな?」「先生に怒られたのかな?」「テストの点があんまりよくなかったのかな?」など、いろいろな可能性を考えた上で、「何かあったから、この子は今、不機嫌なのね......」と思うのではないでしょうか。 では、大人と子どもの立場が逆だったらどうでしょう? 大人が床にものを投げつけたとき、子どもは大人と違って「誰かとケンカしたのかな?」などと想像することはできません。真っ先に「自分が悪いことをしたんじゃないか」と思い込んでしまうことが多いのです。どうしてでしょうか? 実はこの違い、大人と子どもの心の成熟度の違いによるものです。
ここでちょっと変なことをお聞きしますが、あなたは私とは別の存在ですね? そして、あなたはあなたと一緒にいるお子さんとも別の存在ですね? つまり、あなたは「自分はほかの誰でもない唯一無二の存在である」と認識しています。 この「自分は唯一無二の存在である」という認識は、E・H・エリクソンが提唱した心理社会的発達理論の中で「アイデンティティ」と呼ばれ、このアイデンティティの獲得が青年期(目安は13~22歳ごろ)に達成されるべき発達課題であるとされています。 つまり、 22歳以下、特に子どもは「自分は唯一無二の存在である」という認識がまだ十分にできていないということです。我々大人はアイデンティティが確立されているため、「私は私、あなたはあなた」と、自他の境界をはっきりと区別することができ、子どもの不機嫌な様子を見たとしても、「この子の不機嫌はこの子の不機嫌」と捉えることができます。