秋ドラマ名作ベスト5。壮大な“日曜劇場”も感動したけど、圧倒的だったNo.1傑作は
過去と現在、未来の繋がりを、愛と優しさをもって伝える
入念に描かれた点と点が繋がっていく、脚本家・野木亜紀子氏の構成はあっぱれ! 登場人物たちの心情を浮き彫りにし美しく伝える監督・塚原あゆ子氏の手腕も光りました。 私たちのイマは過去を懸命に生きた人たちによって創られており、私たちのイマが未来の人たちの礎(いしずえ)になる。そんな当たり前のことを、愛と優しさをもって伝えてくれた純度の高い人間ドラマだったと思います。
ライオンの隠れ家
そして筆者の今期No.1は、『ライオンの隠れ家』(TBS系)です。市役所で真面目に働く兄・洸人(ひろと/柳楽優弥)と、自閉スペクトラム症の弟・美路人(みちと/坂東龍汰)のところに、異母姉・愛生(あおい/尾野真千子)の息子・愁人(しゅうと/佐藤大空)が現れたことで、事件に巻き込まれていく物語。 病気や障がいのある兄弟姉妹がいる「きょうだい児」、そして「ヤングケアラー」「虐待・DV」などの社会問題にも切り込んだ内容が描かれた本作では、不穏な展開が続きました。しかし、洸人×美路人×愁人の3人が懸命に生活を守ろうと織りなす空気感が、愛と優しさに満ちていて絶妙。
サスペンスではなく、心の葛藤を描いたヒューマンドラマ
登場人物たち一人ひとりが丁寧に描かれており、演じる役者さんたちの演技の解像度が高かったことも、本作の魅力です。記者の在り方について悩み続けた楓(桜井ユキ)、愛生と愁人に暴力をふるってしまった父親・祥吾(向井理)の心の闇。そして、すべての事件は解決しハッピーエンドかと思われた第10話の最後に洸人が失踪。サスペンスではなく、兄弟の心の葛藤を丁寧に描いたヒューマンドラマだったと知らしめました。 筆者は完全にロス確定です。続編はないかもしれないけど、またこの兄弟に会いたい! ======== 他にも、夫婦が3000万円をネコババしたことからドツボにはまっていく『3000万』(NHK総合ほか)や、良作な医療ドラマシリーズになった『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)に、松下洸平の新たな一面が光った『放課後カルテ』(日本テレビ系)などなど、今期は良作が目白押しでした。1月の冬クールドラマ開始前に、観返したいと思います。 <文/鈴木まこと> 【鈴木まこと】 雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
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