「一度消失した細胞は再生しません」1週間・40時間以上、大音量で聴き続けると耳の感覚細胞が劣化
周りの声がわからないくらいの音量で、一日に何時間もイヤホンを使っている人は、今すぐ音量を下げたほうがいい。 また、ヘッドホン・イヤホン難聴は何年もかけて非常にゆっくり進行する。ごくわずかの聴力低下では自覚症状がほとんどなく、自分では気づきにくいのが難点だ。 「初期症状として、耳鳴りや耳閉塞感が表れることがあります。そのような耳の不調を感じて耳鼻咽喉科を受診し、聴力の検査をして初めて難聴とわかるケースも。しかし、初期症状が表れたときにはすでに難聴が進行しているため、早期発見するのはかなり難しいといっても良いでしょう」 ◆治療法がなく「予防」するしか避ける方法はない ヘッドホン・イヤホン難聴は、「耳鼻咽喉科医からみても怖い病気」と、松延医師は話す。 「この難聴のもっとも怖いところは、治療法がないことです。何年もかけて本人が気づかないままゆっくりと進行。そして、『聞こえづらい』『耳が塞がった感じがする』『耳鳴りがする』と感じたときにはすでに機能が低下しています。 一度ダメージを受けて消失した有毛細胞は再生することはありません。そのため、ヘッドホン・イヤホン難聴と診断されたら、デバイスの音量を十分に下げて使用時間を減らし、これ以上難聴が悪化しないようにするしか対処法はないのです」 「聞く力」を保ち、耳の機能を低下させないようにするには、これまでのヘッドホン・イヤホンの使い方を見直し、今日から「予防」することが何より重要になる。 「予防のために大切なのは、まず使用時間を減らすこと。1時間使ったら10分休むなど、イヤホンを外して耳を休める時間をつくってください。寝るときにイヤホンをつけ、音楽や動画を流しながら寝る人がいますが、これは耳にとっては最悪。ある程度の音量でも時間が長ければ耳にはダメージが蓄積します」 音楽を聴く際の音量の設定には個人差がある。難聴を防ぐには、どのくらいの大きさが適しているのだろうか。 「目安は、イヤホンを装着して周囲の会話が聞こえる程度。80デシベル未満の大きさです。ヘッドホン・イヤホンをして人に話しかけられても気づかない、周囲の音が全く聞こえないのは、80デシベル以上の可能性が高いでしょう。 また、ヘッドホン・イヤホンを選ぶならノイズキャンセリング機能付きがおすすめです。周りの雑音を抑制してくれるので、音量を上げすぎなくて済み、有毛細胞へのダメージが少なくなります」