「どうして?」目をかけていた期待の若手部下が退職 後悔する新米上司...そのやり方、熱意は正しかったのか
上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか? 実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。 【画像】経験を積んで、上司も成長していく 今回は、有望な若手部下を厳しく育てようと奮起した新米上司のエピソードです。 ■希望した営業職に配属された、やる気満々の新任部下 Aさんは、専門商社で30代前半の若さで営業課長に抜擢された血気盛んな新米上司。 10数人のチームメンバーを束ねるポジションに着任。ちょうどその年に第二新卒で入社してきたY君に目をかけ、しっかり鍛えて一人前の仕事人に育て上げようと胸に定めました。 Y君は希望していた営業に配属され、やる気満々の元気で人懐っこい若者。 伸びしろも十分期待できそうです。上司のAさんにとっては初めて採用段階から関わった部下でもあり、思い入れもひとしおでした。 どんな仕事にも前向きなY君。しかし、Aさんから見ると、仕事ぶり一つひとつが気になって仕方ありません。 「当たって砕けろ」で、飛び込み営業にも果敢に取り組みますが、成果には結びつきません。新たな企画も積極的に提案しようとし、チーム会議で事前にプレゼンさせるも、上滑りで表面的な内容ばかり。 「提案営業は、自分の言いたいことや見せたいことを華々しくアピールする場じゃない。何よりも、顧客の課題感やニーズをヒアリングすること。そのうえで商品やサービスがお客様にとってどう役に立つのか、分かりやすく伝えることが大事だ」 そう言ってきかせても、進歩が見られません。
熱心に指導するも効果は上がらず
AさんはY君の仕事のやり方について、その都度細かく注意し、時には厳しく叱るなど、「営業の何たるか」を口酸っぱく教え込もうと躍起になりました。 デスクサイドだけでは足りず、会議室に呼び出し、1対1でこんこんと話すことも度々。今どき飲みにケーションははばかられるものの、出張時には夜は飲み屋でじっくり語ることも。 時には説教のしすぎで、Aさん自身がふらふらになるほどでした。 それでも、Y君はAさんが願うスピードで育ってはくれません。成果をなかなか上げられないY君に対する上層部の評価も、厳しくなっていきます。 Aさんは自分の声掛けだけでは足りないと、先輩にあたる他のチームメンバーにもY君への助言を頼みましたが、やはり効果は上がりません。 「君にとって、営業はまだ慣れない仕事。分からないことや自信のないことは、上司や先輩によく訊いて習うように」「先輩に同行させてもらい、営業ノウハウを学んできたら」 そうアドバイスしても、周囲に相談する様子はありません。 Y君がじっとパソコンとにらめっこをしているので訳を聞くと、SNSやグーグル検索で「営業の裏技」を調べているとのこと。 「おいおい、そんなことじゃ、うちの業界やお客様にフィットしたスキルは身に付かないぞ!」と、さらに叱責することに...。