感謝の色紙、絆は残る 震災から8カ月、自衛隊入浴支援終了
●住民「極楽だった」 珠洲・江高さん、筆でしたため 「心からの思いを伝えたい」。自衛隊の入浴支援活動が最終日を迎えた31日、珠洲市内で運営された施設を訪れた住民が「感謝」と大きく書いた色紙を隊員に贈った。何度も手を合わせ、お礼を言う被災者も。能登半島地震の発生から1日で8カ月。厳しい環境の中、人々の暮らしを守ってきた隊員の表情には安堵(あんど)感がにじみ、深い絆が残った。 【写真】自衛隊の入浴施設で湯船に漬かる住民 色紙を贈ったのは江高(えだか)惠子さん(73)。珠洲市宝立町柏原の自宅が大規模半壊と判定され、今後の生活に不安が募る中、前向きに生きようという気持ちになったのは、自衛隊が宝立小中で運営する入浴施設を利用した時だったという。「隊員が笑顔で対応してくれて、うれしくて」と振り返る。 数日前に自衛隊の活動が終了すると聞き、感謝を伝えたいと筆を持った。独学で書に取り組み、今年の現代美術展(北國新聞社など主催)では金沢の避難所で制作した作品が入選した腕前でしたためた。 「ありがとう、という気持ちしかない。一度、うちに遊びにきてほしかった」と目を潤ませた。 色紙を受け取った里見智幸3曹(25)=陸自金沢駐屯地勤務=は「勤務時に民間の人と関わる機会はほとんどなく、お礼を言われてうれしい。災害は起きない方がいいが、今後も準備を怠らず任務に当たりたい」と話した。 自衛隊の入浴施設は、甚大な被害を受けた住民にとってかけがえのない場所だった。地震後10日ほど風呂に入れなかったという松栄(まつえ)清さん(75)=同市上戸町寺社=は「1月中旬に自衛隊の風呂に入った時は極楽だった」と笑顔で語った。 「お風呂はやるせない日々の中の安息と充電になった。隊員のお声がけもうれしく、涙も出た」。入浴した住民が記入するノートには感謝の言葉が並ぶ。 運営に当たった金沢市出身の髙村崚介(りょうすけ)陸士長(22)は、母親が七尾市出身で「思い出深い能登の役に立てて良かった」と話した。 自衛隊は1月6日から入浴支援を始め、珠洲市では現在まで3カ所で続けていた。泉谷満寿裕市長は31日、宝立小中の入浴施設を訪れ、「入浴支援に加え、人命救助や炊き出しにもご尽力いただき、感謝します」と隊員に伝えた。 若山小の入浴施設には、地元児童らが贈った感謝の寄せ書きが掲示された。