東京・菊川の映画館「Stranger」27歳 新社長の挑戦「ミニシアターに行ったことがない人もいてギャップに驚くことも」
「ミニシアターに行ったことがない人もいる」映画の鑑賞スタイルが多様化する中で…
27歳という若さでの社長抜擢は、そんな柔軟な感性に期待されてのことだったのかもしれない。 「どうでしょうね(笑)。ただ私はもともと配給の仕事で、一つの作品を世の中に出すためにいろいろアイデアを出してきたり、今も配給側と劇場側、2つの視点で仕事をしていて両方を同時期にやっているからこそ見えてくるものもあるので、それは自分の強みでもあるかなと思っています。映画好きとして、以前からのStrangerの魅力を継承しながらも、自分と同じ若い世代にもアプローチできるアイデアをどんどん出していきたいと思っています」 若い世代にも、いわゆるシネフィル=映画通はけっこう多い、と更谷さん。一方で…。 「映画の仕事に関係ない同世代の知人たちと話していると、ミニシアターに行ったことがないという人もいてギャップの大きさを感じることもあります。その映画をどうやって多くの人に届けるかだけでなく、どうやって劇場まで来てもらうかも考える必要がある。私は“この映画を公開中に、この映画館で見たいという理由さえあれば、そのミニシアターに行ったことがない人でも見に来てくれると思うんです。何がその理由となるかは一人ひとりで違う。小さな上映イベントでもSNSで呼びかけたら普段から映画情報を探している方が気づいてくれたり、通りすがりのカフェ利用のお客さんが“ここ映画館なんだ”と気づいて映画も見てくれたり。だからとにかくいろいろなフックを用意することが大事かな、と思っています」 シネコンではなかなか見ることができない、小さくても珠玉の映画たちと出会えるのがミニシアターの持ち味。しかし今、数々のミニシアターが個性を放っていた東京でも、その数は減少傾向をたどり続けている。 「映画ファンなら誰でも知るようなミニシアターの名前を言っても、聞いたことがないという人は私の周りにも普通にいます。映画好きなら、こういう面白い映画を今はこの映画館で見れるよと紹介すれば興味を持ってくれると思いますし、一方でイベントだったり、カフェだったりと映画以外の切り口がフックになる人もいると思います。上映する作品に対して少しでも多くの付加価値をつけながら、菊川のミニシアターで見たいと思ういろいろな理由、フックを作り続けることが一番かな、と思っています」 Strangerでは8月8日までアメリカ映画黄金期の名匠ジョン・ヒューストンの特集上映を開催。他、山崎貴監督作『ゴジラ-1.0』、細田守監督作『サマーウォーズ』など、夏休み中のラインアップにも注目だ。 (TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)