使いたくなるエコ梱包で、物流の社会問題をビジネスに変える。comvey代表 梶田伸吾インタビュー
ユーザーが「使いたくなる」仕組みづくり
──現在の事業で一番難しい局面はどんなことでしたか? 「商品を購入したユーザーにサービス利用料も負担してもらう」というビジネスモデルは成り立つのか、というのが一番の課題でした。メンバーと何度も議論し、売り手・買い手・運び手の関係図を毎日ノートに書き…と、インセンティブ設計についてはかなり考えましたね。 関係者のメリットを新たに設計してビジネスとして成り立たせるためには、そもそもの発想を根本から変えなければなりません。ユーザーにとって、単なる梱包材代の追加負担にならないようメリットも付与しながら「気持ちの良い社会貢献」に変えたのが、弊社の強みだと思います。 ──だから、使いたくなるようなシェアバッグのデザインや、ポストに返却する「参加感」も重要なのですね。 シェアバッグは、国産のリサイクル可能なポリエチレン材でできており、荷物のサイズに合わせて3種あります。 郵送に最適な形で仕上げるためには、日本郵便様からのご意見が必要だったのですが、当時はまったくコネがなく…。そこで、直接郵便局の窓口を訪ねて相談することからはじめました。 日本郵便様には何度も相談に乗っていただき、試作を繰り返して郵送の規定に合うデザインが完成。バッグのデザイン、ビジネスモデルも含めて2023年度グッドデザイン賞をいただきました。 ──comveyが最終的に目指すゴールは? 「運び手の負担軽減」は、現在のシェアバッグでのビジネスではまだ解決しきれません。そこで我々が物流の課題解決企業として目指すのは、「1軒1軒の家に届ける」という発想自体を変えること。ドローンやロボットで運ぶというソリューションもありますが、それでも賄いきれなくなってくるはずです。 たとえば、フィンランドではカフェなどを受け取り拠点にして、お客様自身が荷物を取りに来ると、コーヒーがサービスでもらえるというような物流スタイルがあります。このような付加価値のある新しい物流の形を提供していきたいですね。 ──梶田さんの熱意の源泉は何ですか? 私が実現したいのは「人と人との想いが通じあう社会」です。 デジタル化が進み、人と人とのコミュニケーションが失われている世の中全体の温度を上げたい。血の通ったコミュニケーションを浸透させたいという想いがあります。そして、それが「物流でできる」と考えています。 単に物を運ぶだけの機能的なサービスではなく、物流には、人に想いを伝えたり、人と人とをつなぐ力がある。それを証明していきたい、というのが熱意の源泉かもしれませんね。