志摩から遠望の富士 写真家・泊正徳さん、冬の始まり「浮き富士」撮影
志摩市在住の写真家・泊正徳さんが11月7日早朝、富士山が宙に浮き上がっているように見える「浮き富士」を安乗(あのり)岬から撮影した。(伊勢志摩経済新聞) 【その他の画像】伊勢・二見興玉神社の夫婦岩の間から「王冠富士」 1894(明治27)年の統計開始以来、最も遅い富士山の初冠雪と発表されたこの日、泊さんは5時ごろ富士山を撮影するために車で出発し、5時15分ごろに撮影を始めた。「昨日寝る前に天気予報を確認し、明日は富士山が出そうだと確信し、再度早朝に富士宮市や富士市上空の衛星写真でも雲がないことなどを確認して出かけた。伊勢志摩の冬の始まりを知らせる『浮き富士』を撮影することができて気持ちよく帰宅すると、『初冠雪』の知らせがテレビから流れていた」と泊さん。 伊勢志摩から富士山までの直線距離は200キロ以上。気温が下がる冬の早朝の、空気が澄み水平線上に雲がないことなどの条件が重なった時、遠望の富士が観測できる。日中は大気中のスモッグやちりが影響し、ほとんど見ることができない。安乗岬には全国に16施設ある「のぼれる灯台」の一つ「安乗埼灯台」が置かれ、船舶が安全に航行するのを助けている。 海の上に浮いたように見える「浮き富士」を観測できるのは、志摩市と鳥羽市の一部の海抜0メートルの地点からだけで、泊さんはそれが日本で唯一であることを知らしめた一人。「浮き富士」は、志摩半島沖を流れる水温が温かい黒潮の影響が大きく、特に気温が下がる冬場に海水と水面近くの大気との温度差が大きくなることで光が屈折して起こる「蜃気楼(しんきろう)」の一種「浮島現象」による。 泊さんは「この地域では大みそかの早朝に墓参りをする風習があり、僕が10歳のころの大みそかに、海岸近くにある墓地に家族で行った時に見たのが人生初の富士山だった。それから50年近くたち、少年だった自分が見たあの美しい富士山を撮ってみたいと思い、初めて撮影に成功した場所がここ安乗。僕にとっては写真撮影を始めた原点。今シーズンも伊勢志摩から、さまざまな表情の富士山を撮影したい」と話す。
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