松本まりかが体験した極限状態「思いつめたし、絶望もしました」
「あの強烈な映画体験は、生涯この身体から離れることはないでしょう」 これは映画『湖の女たち』で福士蒼汰さんとW主演を務めた松本まりかさんが、映画の公式サイトに綴っている言葉だ。 その「強烈な映画体験」とはどのような体験だったのか。 【写真】松本まりかさんの麗しさ、そして極限状態にあった現場は… 本作は、吉田修一さんの原作を、大森立嗣監督が脚本・監督をつとめた作品。湖のある町の介護施設で起きた殺人事件をきっかけに、人間の本能や依存心も浮き彫りになっていく物語だ。事件の捜査をする刑事・圭介を福士蒼汰さんが、容疑者のひとりでもある介護士の佳代を松本さんが演じている。圭介と佳代は嫌悪もありながら近づき、そして背徳的な関係に溺れていく。 松本さんに人間の本能や依存心について聞いた前編に続き、インタビュー後編では「強烈な映画体験」を深く掘り下げていく。全身全霊で臨んだ本作の役作りに、そして撮影中に感じた恐怖と葛藤とは――。
佳代として極限状態でありたかった
この映画には、松本さん演じる佳代が冬の湖に飛び込むシーンがある。観ていてゾッとする光景だったが、恐怖は感じなかったのだろうか? そしてこれだけ強烈な役を演じた後で、すぐに素の自分に戻れたのだろうか? 「飛びこむ前は、怖さより寒さのほうが勝っていました。カメラが回っている時は極限状態なので、怖さも何もないという感じでしたね。 終わった後で、佳代という役を引きずることもなかったです。そもそもこの作品に入る直前まで、ドラマ『最高のオバハン中島ハルコ』を撮っていましたし、『湖の女たち』が終わってからは、すぐにポップな映画『アイスクリームフィーバー』の撮影に入ったので。もう振り幅がすごかったです(笑)。 ドラマから『湖の女たち』に入る時は、気持ちを切り替えるのが大変でした。撮影は琵琶湖で行われたのですが、現地に着いてから1ヵ月間ずっと、皆さんが宿泊しているホテルではなく小さな旅館で過ごすようにして。とにかくその環境に馴染むため、できるだけ他の要素を入れないようにしていました」