なぜ隙のある人は信頼される? 「相手を惹きつける人」の言葉選び
信頼される人のバランス感覚
先ほど述べたとおり、敬語を使える人には【品格】を感じる。言葉遣いだけでなく、「芯のある声」や、「丁寧な話し方」、例えば、相手に応じて話すテンポを変えてあげたり、絶妙な相槌を入れたりなど、これができるだけでも【品】を感じさせることができる。 声にはその人の「人柄」が現れ、話し方には「人間性」が現れる。そこに【品】のあるなしも感じられる。手前味噌ではあるが、私がナレーションをすると「作品の格が上がる」と言っていただけることがよくある。それは、声の分析をしてもらった結果と繋がるのだが、私の声が、人間にとって聴きやすい周波数であることと、倍音(声の膨らみや厚み)が多いことに由来すると考えられる。 ただ、「この人なら」と信じてついていきたくなる人は、「完璧なまでに品が良い人」なのか? というと、必ずしもそうではないと思う。「信頼される人の共通点」には次のようなものがあった。 裏表がない・感情が豊か・正直・素直・バランス感覚がある・ユーモアがある・愛がある・隙がある・明るい・好かれようと思っていない この中の「裏表がない」という特徴について考えてみよう。 「裏表がない」ということは、「正直」とも言える。正直に意見を言う分、人から嫌われることもあるだろう。「好かれようと思っていない」という特徴にも繋がってくる。誰に対しても丁寧で品格の高い人ではあるが、誰からも好かれようとは思っていない。一種相反するイメージでありながら、この絶妙なバランス感覚を持っている人に、人は信頼感を覚えると言える。
毒は毒でも少しだけ
ここで注目したいのが「少しの毒」というキーワードである。 毒草の「ベラドンナ」は大量に摂取すると意識障害を引き起こし、幻覚や痙攣を起こすが、解毒剤としての効能も持っており、風邪薬に配合されている。また、あの猛毒の「トリカブト」も命を奪う危険があるものの、根っこの部分を使って作られた漢方薬は夜間の頻尿に効くそうだ。 では、人間性においての「毒」はというと、コミュニケーション上、有害となり、ときには人間関係を壊してしまう猛毒となることがあるので注意が必要だ。 しかし、先ほどの毒草と同じで、「毒」の出し方、見せ方によっては、「効能」もある。その人の「魅力」ともなり得る。 例えば、「ただ可愛いだけ」のアイドルよりも、「ほんの少しの毒」となるユーモアやウイットのある発言をするアイドルのほうが人気が高く、芸能人として長続きする。今のメディアでは、「華やかで、品があり、少しの毒がある」、この3つがバランスよく備わった人物が求められている。 同じように、「信頼される人」も、誰にでも意見を合わせる八方美人よりも、相手の意見に対して、時には違う意見をはっきりと言ったり、時に少し毒っ気のあるウィットに富んだ発言をするなど、場の空気をピリリとさせる人のほうが信頼される。 さらに、その際、正しいことを真っ向から主張するのではなく、相手の逃げ道を確保してあげた上で、ユーモアを交えながら意見を伝えることができると、「少しの毒」におさえられ、コミュニケーション上での「薬」として効果的に使える。