くだらないけど面白い…! 映画『聖☆おにいさん THE MOVIE』評価レビュー。最も再現度の高かった俳優は?
笑いと現実感が交錯する日常描写
なお、日常の描写にも光るものがあった。たとえば、有名な氷菓・パピコを買ってきたブッダは、「分け合いたい主義」なのだと言って、イエスと半分ずつ食べる。イエスは、「さすが仏」などと軽口を言って受け取り、パピコのチューブの端をちぎった。そして、ちぎれた側に残っているわずかな中身を吸う。 この庶民感覚は、『聖☆おにいさん』ならでは。買い物用のビニール袋をちまちまと三角形に折る描写などと相まって、随所にくすぐりと現実感をもたらしていた。今回の「THE MOVIE」は、原作の中村が劇場映画のために描いたエピソードだけあって、一種独特の“イズム”が色濃く反映されていたように思う。 ちなみに、今回の映画を最後の最後にかっさらっていったのは、神の子でも仏でもなく、堕天使ルシファーだった。ルシファーは“闇堕ち”したかつての天使長で、突如中二病感あふれるコスチュームで現れたかと思いきや、熱く叫んで壮大なグダグダを見事に回収。どんなセリフだったかは、観てのお楽しみ。ギャグ作品なのに救われた気持ちになってしまうこと請け合いだ。 【著者プロフィール:近藤仁美】 クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強~知らないとヤバい事~』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。2023年、「Trivia HallofFame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『人に話したくなるほど面白い! 教養になる超雑学』(永岡書店)など。
近藤仁美