４回表、神村学園の先制に沸く一塁側アルプススタンド＝２１日、兵庫県西宮市の甲子園球場

　あと一歩だった。神村学園は２１日、全国高校野球選手権準決勝で東東京代表・関東第一に惜敗。鹿児島県勢３０年ぶりの夏決勝に届かなかったものの、攻めの姿勢を貫き強豪を追い詰めた。合言葉「やかぜ」精神を胸に２年連続の４強。「来年こそ日本一を」「胸を張って」。拍手の鳴りやまないスタンドで、駆け付けた野球部ＯＢら約１９０人も健闘をたたえた。 【写真】神村学園のチャンスに盛り上がる来場者＝２１日、いちき串木野市の市民文化センター

　「泥臭く、ベストを尽くそうとする姿勢は昔と変わらない」。野球部２期生の豊田安昌さん（３６）＝さいたま市＝は、後輩たちの奮闘を満足そうに見守った。 　部発足２年目の０５年、初出場した春の選抜で準優勝を果たした。豊田さんには忘れられない思い出がある。大会前、メンタルコーチが「ピンチでも、厳しい練習を思い出せる合言葉をつくっては」と提案。話し合いで決まったのが「やればできる、かならずできる、ぜったいできる」の頭文字をとった「やかぜ」。「やかぜ」は野球部だけでなく学園の合言葉となった。 　４回、上川床勇希選手のタイムリーで先制。あちこちに「やかぜ」の文字が躍るスタンドは盛り上がり、紅白バルーンを持ったＯＢからも大歓声が上がった。 　今村拓未投手の力投も光り、１点差で迎えた９回。逆転の好機をつくり最後の打者も中前打を放ったものの、好返球に阻まれスタンドはため息に包まれた。２期生で兵庫県芦屋市の尾中博俊さん（３６）は「絶対に勝つという気持ち、仲間のためにプレーする姿にやかぜ精神を感じた」。昨夏の主将今岡歩夢さん（１９）は「後輩たちから執念を感じた。来年は４強を超え、日本一を勝ち取ってほしい」と期待した。

◇ＰＶに２００人、地元からもエール 　全国高校野球選手権大会で決勝進出を目指す神村学園を地元からも応援しようと、いちき串木野市は２１日、市民文化センターでパブリックビューイング（ＰＶ）を開いた。市民ら約２００人が声援を送った。 　職員が手作りした手旗などを持ち、甲子園の吹奏楽部の演奏に合わせて応援。１点を追う９回の好機には、祈るように両手を握りしめる人の姿も。惜しくも敗れたが、会場は拍手に包まれた。自宅が野球部の球場に近い同市照島のパート時吉みずほさん（６１）は「練習を頑張る声をよく聞いている。堂々と帰って来て」とねぎらった。 　増田有紀、岩下吏玖の両選手が中学時代所属した串木野ドリームズの選手たちも観戦。中学１年の萩原開道さんは「最後まで諦めない姿を見習いたい」。佐藤正剛監督（５２）は「よく打って守った。昨年に続き、刺激のある夏を過ごさせてもらった」と目を細めた。