南極観測船で地球環境を学ぶ「チャレンジングSHIRASE」開催
日本で初めて南極に行った白瀬矗(しらせのぶ)のチャレンジ精神を知ってもらうのと、SHIRASEを通じて五感で自然の恵みや豊かさを体感するイベント「チャレンジングSHIRASE」が20日と21日に開催され、2日間の乗船者数は2,000人を超えた。
千葉県船橋市の南岸に係留されている「3代目南極観測船SHIRASE5002」は、1983年から2008年にかけて活躍。25回の南極航海中、24回も昭和基地へ接岸させた記録を持っている。退役後はスクラップになることが決まっていたが、気象情報会社ウェザーニューズの創業者である石橋博良氏が、宗谷・ふじと続いた日本の南極観測船がそれぞれ保存運営されているのにも関わらずしらせをスクラップにすることに異議を唱え、しらせを「環境のシンボル」として活用していくことを文部科学省へ提案。5団体が応募した結果、ウェザーニューズ社に譲渡することが決定した。より世界に”しらせ”の名前を知ってもらいたい事と、二代目しらせとの違いを明確にするために船名をしらせからSHIRASEに改称し、船体へ新たにSHIRASEの表記を記載している。
船内では、元乗員のガイドによる「船内ツアー」や、南極観測隊員に現役時代の話を聞く「南極クラス」などのほか、実際に観測隊が使用した機材や南極の氷の展示も。また、「触れる地球」や「ソラヨミ教室」などの体験コンテンツもあり、来場者が地球環境を考えるきっかけにもなった。 現在、船の管理運営をしている一般財団法人WNI気象文化創造センターの三枝茂さんは、「子どもたちがここに来て、あの船って何だったんだろうと後々調べて知ってもらう事で改めて理解してもらい、最終的に気象に関する興味を持ってもらえれば」と語った。
SHIRASE5002艦長の宮部二朗氏は、しらせを持ってきた当時の事を鮮明に覚えている。「石橋博良さんは、2010年5月2日をグランドオープンにしようと決め、その時彼はもうがんの末期だったにもかかわらず、絶対に行くと決めていた。その当日、彼はタクシーで船に横付けするわけですよ。そしたら皆がワーッと手をただいて。そしたらこの(岸から甲板までの)長い階段をトントンと上がってくるんですよ。もう体力もないはずなのに艦長室まで上がってきて。そのあとのセレモニーではしらせを持ってきた背景をビシッと説明するわけです。その2週間後に亡くなった。SHIRASEは石橋さんの魂が入っているんです。」 当時のプロジェクトメンバーの一人で、ボランティア参加しているウェザーニューズの中神武志さんは、「オゾンホールなど南極観測において地球環境に対する発見が結構あった。そういった役目を果たした船をスクラップにしていいのかというところから始まった」と語った。船を係留する場所にも苦労したそうで、当初は千葉港も検討したが、水深が足りず船橋市のこの場所に決まったという。 次回のイベント開催は10月12日(土)を予定している。