「夜ふかしマンガ大賞2024」第1位! 谷口菜津子「感想はマンガを描く 原動力。SNSもかなり読んじゃいます」
●谷口菜津子さんのおすすめのマンガは?
――谷口先生が今注目しているマンガは? 谷口 横槍メンゴさんがおすすめしてくれた鳥トマトさんの『東京最低最悪最高! 』がすごくよかったです。「月刊! スピリッツ」で連載が始まったばかりですが、いい意味でアクが強い。この人にしか描けないだろうなというノリというかテンポを感じる作品です。この方の短編集『アッコちゃんは世界一』も大好きです。あと、『働きマン』(安野モヨコ)の最新巻もすごくよかった。 ――17年ぶりに単行本未収録だった話をまとめた第5巻が刊行されて話題になりましたね。 谷口 今の価値観ではありえないという描写はあるにしても、その時代の働く女性たちがどんな気持ちだったかを伝える資料としても意義深いと思います。過去にがんばってきた人たちがいるから、今働きやすくなっているのだし。『働きマン』は全巻揃えていますが、一生手放すことはない、これを支えにがんばろうと思うような存在です。 ――マンガは紙で読む方ですか? 谷口 基本的には紙で、本屋さんで買ってます。連載中で楽しみに読んでいるのは『あかね噺』(原作・末永裕樹/作画・馬上鷹将)。落語をマンガで語るって、ともすれば退屈になりかねないのに、作画の表現力と話のテンポのよさで読みやすく描いていて。マンガの勉強としてもためになります。 ――「夜ふかしマンガ」をおすすめするとしたら? 谷口 『ただの飯フレです』(さのさくら)。ほとんど会話劇なんですが、リアルな会話が聞こえてくるような感じが楽しくホッとできるマンガ。そばに置いていて、ふとまた読みたくなって手が伸びますね。それから『かまくらBAKE猫倶楽部』(五十嵐大介)。毎回、猫にまつわる不思議な話が語られるという内容で。気持ちよく引きこまれ、穏やかな気持ちで読めるので、おやすみ前にぴったりです。 ――谷口先生はごはんをおいしそうに描くマンガ家として定評がありますが、好きなごはんマンガは? 谷口 お気に入りを繰り返し読んでいますね。たとえば『オリオリスープ』(綿貫芳子)、『ホクサイと飯さえあれば』(鈴木小波)。どっちも料理をする工程がすごくおいしそうで。うっかり影響されて似てしまわないようにしなきゃ、と思うくらい繰り返し読んでいます。きくち正太先生の『あたりまえのぜひたく。』も。マンガがうますぎて、ため息ものです。 ――谷口先生の新作『まめとむぎ』(2024年9月26日に第1巻が発売予定)は舞台が居酒屋、発酵食品がテーマになっていますね。ご紹介をお願いします。 谷口 不倫をして会社を辞めた麦という女の子が、発酵食大好きな居酒屋店員・マメといっしょに働きながら変化していく物語です。不倫って世の中の絶対的な悪とされていて、もちろん私も良くないと思っているんですが、「一回悪いことをしてしまった人は一生幸せになっちゃいけないの?」という疑問を持っていて。厳しい目線とともにやさしい目線も必要なのではないか。やらかしてしまった人がその後、周りの協力を得てどのように変わっていけるのかを描いてみたいと思ったんです。 ――食べ物のことをよく作品に描かれるのは、純粋にお料理が好きだから? 谷口 日ごろ、本当に食べ物のことばかり考えているんですよ。寝るときも「明日何食べよう?」とか(笑)。楽しいから。 ――小さいころからお料理が好きだったのでしょうか。 谷口 いえ、ぜんぜん。25歳くらいのときに友達と一緒に住み始めたんですが、その人たちがけっこう生活を大事にするタイプで。暮らしぶりを見ているうちに料理っていいなと思うようになったんです。