追い比べを制したジャスティンミラノ（中）が無敗の皐月賞馬に輝いた（カメラ・高橋　由二）

◆第８４回皐月賞・Ｇ１（４月１４日、中山・芝２０００メートル、良） 　クラシック３冠初戦の第８４回皐月賞・Ｇ１は１４日、中山競馬場の芝２０００メートルで行われ、２番人気のジャスティンミラノがコースレコードでＶ。無傷３連勝でＧ１初制覇を果たした。落馬事故で１０日に亡くなった藤岡康太騎手（享年３５）が調教をつけ、仕上げたキズナ産駒。戸崎圭太騎手（４３）＝美浦・田島厩舎＝、友道康夫調教師（６０）＝栗東＝は天国からのひと押しに感謝した。５着馬までが日本ダービー・Ｇ１（５月２６日、東京）の優先出走権を獲得した。 　　割れるような大歓声。全身に浴びてジャスティンミラノとスタンド前に引き揚げてきた戸崎は、天に届けとばかりに大きくガッツポーズ。迎える厩舎スタッフの目には大粒の涙が光った。友道調教師は「最後の直線では思わず『康太！　康太！』と叫んでいました」。顔をくしゃくしゃにして鞍上の肩を抱き寄せた。 　今月１０日、落馬事故で亡くなった藤岡康太騎手がデビュー前から調教をつけてきたキズナ産駒は、史上２１頭目となる無敗の皐月賞馬となった。戸崎は声を詰まらせ「藤岡康太騎手が２週前、１週前と攻め馬をして、細かく状態を教えてくれました。最後は康太がひと押ししてくれたと思います」と感謝した。 　前半１０００メートル通過が５７秒５というハイペースを４番手で追走。最後まで脚を伸ばせたのは馬の能力はもちろん、鞍上の気迫もあった。「康太の思いも乗せて走ろうと思っていました」。先に抜け出した２歳王者をかわし、外から迫るコスモキュランダを首差振り切っての１冠奪取。全身全霊の手綱さばきだった。 　友道厩舎にとっても、康太騎手は欠かせない存在だった。１３年３月のフリー転向後ほどなく、毎週の調教を手伝うようになった。３頭の日本ダービー馬をはじめ、多数のオープン馬の仕上げに携わった。マカヒキとワグネリアンではレースにも騎乗し重賞Ｖ。友道師は「今回の１週前追い切りに乗ってもらって『１週前としては最高でしたよ』と話したのが最後の会話でした。この勝利は彼のおかげです」と、おえつ混じりに振り返った。 　亡き盟友の思いも背負い、クラシックホースとなった。次なる目標は日本ダービーだ。トレーナーは「テンションが高くなる部分もマシになっているし、今回は輸送で体重も減らなかった。馬は成長してくれている。ダービーの方が競馬はしやすいと思っていたし、２冠を狙いにいきたい」と宣言。戸崎も「自分も２着２回の舞台。またチャンスのある馬に巡り合えたので、感謝しながら過ごしていきたい」と言葉に力を込めた。天国へ、日本競馬最高の名誉を報告できる日も近い。（角田　晨） 　◆ジャスティンミラノ　父キズナ、母マーゴットディド（父エクシードアンドエクセル）。栗東・友道康夫厩舎所属の牡３歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算３戦３勝。総獲得賞金は２億７４８２万１０００円。主な勝ち鞍は２４年共同通信杯・Ｇ３。馬主は三木正浩氏。