【物価も給料も激安ニッポン】アジア諸国では200円超で売られる100均商品、“経営幹部の給料”はタイやフィリピンよりも低水準
安い労働力を提供する側に
「物価」と表裏一体の関係にある「給料」も同様の状況がある。 かつては“強い円”を求めて日本に出稼ぎに来るアジア人が多く、「ジャパゆきさん」が流行語(1983年)となったこともあるが、現在は全く違う。 「コンサル企業・マーサージャパンの2022年の調査によれば、日本の経営幹部レベルの給料は、中国より3割、韓国より2割安く、フィリピン、インドネシア、タイよりも低水準でした」(永濱氏) 2022年に経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」でも、日本の大企業の部長職の年収は約1714万円とされ、シンガポールの約3136万円はおろかタイの約2054万円よりも低かった。 明治大学ビジネススクール教授の藤岡資正氏が指摘する。 「日本よりもタイやインドのほうが部長・課長の平均年齢が低く、若くても高い給与を得ることができます。加えて、OECDの平均年間給与データの2000~2021年の推移を見ても、韓国は1.4倍に増えたのに、日本は20年間横ばいです」
安い給料が上がらないのだから、働き先としての魅力もない。アジアの人材は自国で働くか、他国で稼ぐにしてもシンガポールや中国、韓国を選ぶのが自然になっているのだ。人材が集まらなければ、ビジネスの競争力も低下する悪循環になる。 ビジネス効率性などの項目から各国の競争力をランキング化したIMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力年鑑」で、日本は1992年まで1位だったが、現在は35位。中韓はおろか、タイやインドネシアよりランクが低い。 「日本で労働人口が減り、賃金水準も低いままの状況が続く一方、東南アジアの主要6か国の労働人口は2030年に3.3億人まで増大し、経済発展による所得の向上とともに分厚い中間層が形成され、旺盛な購買意欲を持つ巨大市場が育ちます。今後、より多くのアジアの中間層がインバウンドで来日し、安い日本を謳歌するでしょう」(藤岡氏) 激安ニッポンの未来について永濱氏はこう語る。 「日本経済の“病”の根は深く、アジアとの差は開く一方です。もはや、円安と低賃金を逆手に取り、安い労働力を提供する生産拠点としてアピールし、アジア企業の日本進出を求めるくらいの発想の転換が求められる。過去に日本企業がアジアを生産拠点としたのと逆の道を歩むかたちです」 日本経済が“アジアナンバー1”だった時代は、遥か昔の話のようだ。 ※週刊ポスト2024年7月12日号