日豪EPA合意 「EPA」「FTA」「TPP」の違いって何?
機能不全のWTOを補完するFTAとEPA
WTOに替わって、重視されるようになったのがFTAです。FTA は2か国以上の国や地域が、お互いに関税などの貿易を制限する障壁を撤廃または削減することで、モノやサービスの流通性を高める協定です。通商によって資源、エネルギー、食料などの供給も安定し、政治的な関係も強化されるメリットがあります。 FTAの発展型がEPAです。貿易を行うようになると、相手国内への工場の建設や店舗の設置、観光や留学などでの人の行き来も増えていきます。そこで、EPAはFTAを柱に知的財産権の保護、投資、人的交流など幅広い分野で連携して関係の強化を目指します。 ただし、過去に成立したFTAの多くが今では貿易以外の経済協定を取り入れており、また海外では内容的にはEPAであっても習慣的にFTAという呼び名が用いられることが多いため、FTAとEPAの違いは明瞭なものではなくなっています。
TPPとFTA、EPAとの違いは?
FTAを多国間に拡大したものがTPPで、環太平洋という広い地域での経済連携を目指す協定です。対象も幅広く、環境、労働、電子商取引など新しい分野を含む21分野で交渉が進められています。「例外なき関税撤廃」が前提で、原則としてすべての品目での関税撤廃を掲げています。 TPPもFTAのひとつであり、EPAでもあります。ちなみに、EU(ヨーロッパ連合)もFTAでありEPAですが、加盟国以外の国々に対して、加盟国すべてが共通の関税をかけるところに特色があり、このような地域経済統合を「関税同盟」といいます。 実はWTOでは「最恵国待遇の原則」といって、加盟国の間で貿易を行う際、差別することを禁止しています。世界の国々の多くはWTO加盟国ですから、どの国にも同じ関税をかけないと「最恵国待遇の原則」に反するはずですが、自由貿易地域は例外として認められています。ある程度、国や地域の「数」を絞らないと、現実には貿易協定を設置するのは難しいということなのでしょう。 (広沢大之助・社会科編集者)